「見つけてもらえないかもしれない」
「え?」
「誰にも知られずに死にたいなら、重りつけて海に飛び込むのが一番だと思うけど。でも私は、誰かに見つけてほしい。見ててほしいの、私が死ぬところ」
「……なんで、」
そんなに、話題性にこだわるのか。
聞こうとして、カナタは口を噤んだ。
この質問も、立ち入りすぎだ。
自分がしていいのは、サエキが死にたい理由を知ることではなく、彼女の死ぬ方法を探ることだ。
ただ結果だけ与えればいいのだ。
そう思い直して、言葉を変える。
「線路、拳銃、入水は却下。あと他に、こんな死に方やだってのは、ある?」
「うん?」
振り返って、また前を向いて、サエキは少し眉を寄せて、「んー……」と唸り声をあげた。
忙しい人だ、と思いながら、カナタはその横顔を見る。
彼女が要求しているのは、綺麗で、派手で、人の記憶に残って、どれだけ苦しもうとどれだけ痛かろうと、必ず穏やかな顔で死ねる方法だ。
「首吊りは嫌かなあ……」
「なんで? 鉄板じゃん。ちゃんとやれば結構簡単に死ねるよ」
「え、だって……垂れ流すんでしょ?」
ぱっと横を向いたサエキは、難しい顔のままで言った。
あまりに真剣な目付きだったので、つい面白くなってしまう。
ふ、と小さく笑いを漏らすと、サエキはカナタの肩を叩いた。
「なんで笑うの!」
「そんな、すごい真顔でなに言ってんの」
「だってそう言うじゃん」
カナタは顔を逸らして、口許を手で覆って、肩を揺らす。
サエキは叩いた手でそのまま、カナタのパーカーの袖を掴んだ。
押されてぐらついてよろめいて、咳払いをして向き直る。
口の端がまだゆるんでいるのは自覚していたが、サエキの唇が不満げに尖っているのを見てしまっては、仕方がないだろう。


