「……ね、こ? だよね」
「たぶん?」
「え、なに、これ」
「さっきの雑貨屋のレジ横にあった。あそこのオリジナルだって」


靴をレジに持って行った時に、ついでに買っていたらしい。

縦に長い三角形の体に、台形の頭と、ひょろひょろでくたくたの手足と尻尾がついた、人形のキーホルダーだった。

尖った耳と肉球でかろうじて猫だとわかったくらいには、よく言えば個性的な姿をしていた。
小動物にあるまじき三白眼と、むすっとした口許。
手足と尻尾の先だけ白くて、あとは灰色の体をしている。
サエキの小さな手にちょうど収まるくらいの大きさだ。


「プレゼント」
「え、俺に?」
「そう、超かわいくないよねー」
「うん、かわいくないね」
「この顔のテンションが、なんかカナタに似てる」
「俺? 似てんの、これに」
「うん。やばいかわいい」
「かわいくないんじゃなかったの」
「かわいくなかわいいー」


サエキの手から受け取ると、猫の人形は思いの外ぐったりとしていた。
中身は綿ではなく、パウダービーズかなにかのようだ。

テンションが似ているとか、かわいくなかわいいだとか、よくわからない評価を述べるサエキに、戸惑った視線を向ける。
サエキはにっこりと笑った。


「お近づきのしるし?」
「しるし。」
「そ。あげる」
「はあ……ありが、とう?」


人差し指にリングを引っ掻けて、今度こそ据わった目と視線を合わせる。睨み付けてくるふてぶてしい目を見ながら、俺こんなテンションに見えてんのか、と考えていた。