「ほら、クリオネの話した。」
「あぁ……、夜がクリオネみたい、ってやつ?」
「そう」
「食べることとやらしいことしか考えてないんでしょう」
「それはもういいって」
「全然否定しないね」
「知ってる? クリオネって、死んだら溶けてなくなっちゃうんだよ」
「そうなの」
夜の肩に、ことりと頭が乗った。
相槌を打ちながら、頬を擦り寄せてくる。
「なんで今それ?」
「なんとなく……」
「出会った頃の思い出話とか、嫌なフラグ」
「いや、まあなんか」
左肩でうりうりと動く千空を一瞥して、夜も隣へと頭を傾けた。
前髪に頬を寄せる。
「間を持たせようと」
「ふぅん」
「千空がエロいから」
「えぇ? はは、」
彼女が笑うのが、触れた体の左側全部から伝わってくる。
上から覗き込むと、睫毛がはたはたと瞬いて、それから目が細められた。
「でも、いいなあ、死んだら溶けるなんて、うらやましい」
「前も言ってたよね、うらやましいって」
「そうだっけ……、そうだった」
「……消えたいの。まだ」
「じゃなくて」


