「あーそれドラマとかでよく見るー。なんでくわえるの」
「こう……歯で押さえちゃって、狙いがブレないようにする」


そう言いながら、カナタは口に突っ込んだ人差し指に、軽く歯を立てる。


「あと、口の中からなら、脳との間に邪魔な骨がないでしょ」
「あぁー……そっかぁ、頭いいね」
「誰が?」


サエキはこめかみに指を押し付けていた手を、ゆっくりと降ろした。
そしてそれを緩慢な仕草で、カナタへと向ける。


「でも銃なら頭は撃ちたくないな」
「ふうん? ……そう」


カナタは自分に人差し指の銃を向ける彼女の、髪をちらりと見た。
確かにこんな綺麗で不思議な色の髪を、血で真っ赤に染めてしまうのは、もったいないかもしれない。

細い銃口が、カナタの胸へ向けられる。


「顔だけは原型とどめておきたいのよ。やっぱり撃つなら心臓かな?」
「心臓撃ったからって、死ねるとは限らないよ。喉にしたら?」
「喉?」


サエキの視線が自分の喉元へ向いたのを見て、カナタは少し顎を引いた。
凹凸の少ない首を、くい、と傾げてみせる。


「口にくわえるのも、脊髄を傷付けるためらしいから。こう、喉に押し当てて」


そう言って、自分の人差し指を、鎖骨の中心に当てる。


「ちゃんと正面からまっすぐ撃てれば、脊髄に当たると思う」
「そーか。首ならそんなに血でないかな……首の後ろにクッションでも当てておけばいいか。あ、でも」