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水平線が白い。
少しずつ、少しずつ、空が色づいていく。
頼みもしないのに、いつのまにか、朝が来ていた。

カナタはベッドに腰掛けたまま、ずっと一向に暗いままの海を、眺めるふりをしていた。

本当は、こんなところに留まる気なんかない。
だがカナタの言葉を最後に押し黙ったサエキは、何も言わないまま立ち上がって、鍵のかかったドアの前に座り込んでしまったのだ。
まるで、カナタを行かせまいとするみたいに。

カナタは項垂れて、頭を抱えて溜め息をついた。
熱が出そうだ。
サエキの反応がずっとないのも恐ろしい。
だが、顔を見て表情を確認することはもっと恐ろしくて、とてもじゃないがドアの方なんて見る気にはなれなかった。

カナタの溜め息につられたのか、サエキも、ほう、と息を吐く。
そしてやっと反応らしい反応を示したのは、カナタが口を閉じてから、その時がはじめてだった。