そう言った瞬間の、サエキの歪んだ表情は、カナタを動揺させるには、十分だった。

自分のことなのだから、日本人男性の平均的な体格よりずいぶん小柄であることは知っているし、不健康な肌の白さも、頼りないほどの細さも、自覚している。
自分でわかっていることを言っただけで、サエキを馬鹿にしたわけでもないのに、どうしてそんなに傷ついた顔をしたのか、わからなかったのだ。


「なんでそんなこと言うの」
「なんでって……ほんとのことでしょ」
「私そんなふうに思ったことない」


それは本心なのだろうとは思った。
もし彼女がカナタを華奢で頼りないと感じていたとしたら、こんな相談を持ちかけてはこないだろう。

だが、サエキがどう思っているかではなく、周りにどう見られるかが問題なのだ。
例えサエキにとってカナタがどうであろうと、件の先輩から見てカナタが頼りなく見えれば、まったく意味のないことだ。

それをわざわざ説明しなければならないことが癪で、そんなことで気分を害する自分の大人げなさにも苛立って、言葉尻が荒くなる。
サエキの困った顔さえも、今は神経を逆撫でる要素でしかなかった。