「はい爽汰、あーん」
「お、美味いなこれ」
「でしょー!…あっ、関節キスになっちゃった・・・」
あたしのすぐ後ろで繰り広げられる会話。
吉田くん…。
声だけでもわかる、吉田くんと李恋ちゃん。
二人で、正確に言えば大人数でだけど、楽しそうにテーブルを囲んでいる。
吉田くんと李恋ちゃんを、みんながはやしたててるのが聞こえる。
・・・やだ、やだよ。
そんなに楽しそうに笑わないで。
あたしじゃない人に“あーん”なんてやらせないで。
自分の中の黒い部分が、渦巻いているのがわかる。
ただ呆然とその光景を見ているしかなかった。
そのときだった。
ふと、李恋ちゃんと目があった。
う、わ…なんか気まずいな。
そう思っていても、目を逸らすことはできなかった。
李恋ちゃんは、あたしに向かって勝ち誇った笑みを浮かべて、そのまま吉田くんの方を向いた。
なに、今の。
吉田くんと付き合ってるのは私だ、とでも言うような笑みに、あたしは寒気がした。
なんか、怖い…。

