「花!花!」



白く、ぼやけている世界の中。


もう二度と会うはずのない人が必死にあたしの名前を呼んでいる。



その声の元に行きたいのに、目の前には透明な壁。



壁の向こうには、大好きな、大好きな、あたしのお母さん。



「お、母さん!お母さん!」



透明な壁をどんどん叩くけど、ビクともしない。



お母さんは、さっきまで必死になってあたしの名前を呼んでいたのに、今はもう諦めたような表情であたしを見つめている。




そして、あたしに一度微笑みかけたあと、くるっと背を向けた。




「待って!お母さん!行かないで…!もうあたしを一人にしないで!」



お父さんがいるはずなのに、あたしはこんなことを口にしていた。



白い光が、静かにお母さんを包み込んだ。