beautiful love ★ 俺様boyと天然girl

水乃Side

「早手がいてくれて、すごく心強かった」

木南さんの言葉が、胸の奥に残った。

「…………」

「何かしてくれるとかじゃなくても、話聞いてくれるだけでよかったんだ」

木南さんはそう言って、少しだけ俯いた。

「家に帰りたくないって言った時も、何でとか、ちゃんと話せとか……無理に聞いてこなかったし」

「……うん」

「帰りたくないなら、もうちょっとここにいればって言ってくれたり。連絡したら返してくれたり」

早手らしい。

そう思った。

自分から何かを聞き出すようなことはしないくせに、本当に困ってるって分かったら放っておけない。

昔から、そういうところがある。

「……だから私」

木南さんが小さく息を吐いた。

「早手のこと、好きになったんだと思う」

「…………」

分かってたはずなのに。

本人の口から聞くと、胸が少しだけ痛んだ。

「告白したんだ」

「……うん」

「知ってる?」

「……少しだけ」

「そっか」

木南さんは困ったように笑った。

「振られたけどね」

「…………」

「その時に初めて、水乃ちゃんと付き合ってるって聞いた」

思わず木南さんを見る。

「……早手が言ったの?」

「うん」

知らなかった。

早手が木南さんに、私のことを話してたなんて。

「正直、その時は嫌だった」

木南さんがぽつりと言う。

「水乃ちゃんのこと」

「…………」

「だって、ずっと早手の近くにいるし。幼なじみだし。それで彼女だって聞いて……勝てないじゃんって思った」

少し笑いながら言われたけど、私は何も返せなかった。

「だから余計に、早手に頼ったりしてたのかもしれない」

「……え?」

「早手が優しくしてくれたら、もしかしたらって思ってたから」

木南さんの指が、制服の裾を掴む。

「でも……違ったんだよね」

「…………」

「早手が私の話聞いてくれてたのって、私のこと好きだったからじゃない」

ゆっくり顔を上げた木南さんと、目が合った。

「困ってるから、放っておけなかっただけ」

「……木南さん」

「それくらい、今なら分かるよ」

少し寂しそうに笑う。

「だって早手、水乃ちゃんの話する時だけ全然違ったから」

「……え?」

思わず聞き返した。

木南さんは少しだけ目を細める。

「私が告白した時もそうだった」

「…………」

「水乃ちゃんが彼女だからって言った時、迷ってなかった」

胸が、強く鳴った。

「私がどれだけ早手のこと好きでも……そこだけは入れないんだろうなって思った」

「…………」

そんなこと。

言わないでほしい。

だって。

それを聞いたら、また。

早手のところに戻りたくなる。

「……でも」

木南さんが小さく息を吐いた。

「それでも、早手がいてくれてよかったって思ってる」

「…………」

「この前のことも……早手が前から話聞いてくれてたから、私も誰かに助けてって言えたのかもしれない」

その言葉に、何も言えなくなった。

早手がいてくれてよかった。

木南さんにとって。

早手は、それくらい大きな存在だったんだ。

「今は先生とか、いろんな人が話聞いてくれてるけど……」

木南さんは少しだけ笑った。

「やっぱり早手と話すと、安心するんだ」

「…………」

胸が、また痛くなる。

早手が私を好きだってことも。

私と一緒にいたいって言ってくれてることも。

ちゃんと分かってる。

それでも。

目の前にいる木南さんを見ていたら。

私だけが早手のところに戻って。

木南さんから早手まで取ってしまうような気がした。