水乃Side
昼休み。
優希は先生に呼ばれていて、私は1人で教室に残っていた。
机の上を片づけていると。
「……水乃ちゃん」
「え?」
顔を上げる。
木南さんが、私の机の前に立っていた。
「……ちょっと、いい?」
「うん」
木南さんは一瞬、周りを気にするように教室を見渡した。
「ここじゃなくて……別のとこで話したいんだけど」
「……分かった」
何の話だろう。
そう思いながら、木南さんの後について教室を出た。
人の少ない階段の踊り場まで来ると、木南さんが足を止める。
しばらく何も言わないまま俯いていた。
「……木南さん?」
「水乃ちゃんって……」
ゆっくり顔を上げる。
「この前のこと、早手から何か聞いた?」
「…………」
やっぱり。
その話なんだ。
「……少しだけ」
「そっか……」
木南さんは小さく息を吐いた。
「どこまで?」
「家のことで……前から早手に相談してたって」
「……うん」
「今は家を離れてることも」
そこまで言うと、木南さんは少しだけ目を伏せた。
「……そっか」
「ごめん。早手から勝手に――」
「ううん」
すぐに首を振られる。
「いいの。私が早手に話してたことだから」
「…………」
木南さんは手すりの方へ視線を向けたまま、少し黙った。
「私ね」
「うん」
「前から、家に帰るの嫌だったんだ」
いつもの木南さんより、ずっと小さな声だった。
「お母さんともあんまりうまくいってなくて……家にいる人とも、いろいろあって」
「…………」
「誰にも言えなかったんだけど」
木南さんが少しだけ笑う。
でも、その笑顔はどこか寂しそうだった。
「早手には、言えたんだ」
胸の奥が、きゅっとなる。
「最初はちょっと愚痴聞いてもらうくらいだったんだけどね」
「……うん」
「でも、だんだん家に帰りたくない日とか……どうしたらいいか分かんない時に、連絡するようになって」
早手が言ってたことと同じだった。
夜に連絡が来ることもあった。
放っておけない時もあったって。
「早手、迷惑だったと思う」
「…………」
「でも、ちゃんと話聞いてくれてた」
木南さんが俯く。
「私が何言っても、途中で面倒くさがったりしなかったし」
その言葉を聞いた瞬間。
早手らしいなって、思った。
早手はそういう人だから。
本当に困ってる人を、簡単に放っておけない。
「……あの時も」
木南さんの声が少しだけ震えた。
「早手がいてくれて、すごく心強かった」
「…………」
胸の奥が、また痛くなる。
それでも私は何も言えなくて。
ただ、木南さんの話を聞いていた。
昼休み。
優希は先生に呼ばれていて、私は1人で教室に残っていた。
机の上を片づけていると。
「……水乃ちゃん」
「え?」
顔を上げる。
木南さんが、私の机の前に立っていた。
「……ちょっと、いい?」
「うん」
木南さんは一瞬、周りを気にするように教室を見渡した。
「ここじゃなくて……別のとこで話したいんだけど」
「……分かった」
何の話だろう。
そう思いながら、木南さんの後について教室を出た。
人の少ない階段の踊り場まで来ると、木南さんが足を止める。
しばらく何も言わないまま俯いていた。
「……木南さん?」
「水乃ちゃんって……」
ゆっくり顔を上げる。
「この前のこと、早手から何か聞いた?」
「…………」
やっぱり。
その話なんだ。
「……少しだけ」
「そっか……」
木南さんは小さく息を吐いた。
「どこまで?」
「家のことで……前から早手に相談してたって」
「……うん」
「今は家を離れてることも」
そこまで言うと、木南さんは少しだけ目を伏せた。
「……そっか」
「ごめん。早手から勝手に――」
「ううん」
すぐに首を振られる。
「いいの。私が早手に話してたことだから」
「…………」
木南さんは手すりの方へ視線を向けたまま、少し黙った。
「私ね」
「うん」
「前から、家に帰るの嫌だったんだ」
いつもの木南さんより、ずっと小さな声だった。
「お母さんともあんまりうまくいってなくて……家にいる人とも、いろいろあって」
「…………」
「誰にも言えなかったんだけど」
木南さんが少しだけ笑う。
でも、その笑顔はどこか寂しそうだった。
「早手には、言えたんだ」
胸の奥が、きゅっとなる。
「最初はちょっと愚痴聞いてもらうくらいだったんだけどね」
「……うん」
「でも、だんだん家に帰りたくない日とか……どうしたらいいか分かんない時に、連絡するようになって」
早手が言ってたことと同じだった。
夜に連絡が来ることもあった。
放っておけない時もあったって。
「早手、迷惑だったと思う」
「…………」
「でも、ちゃんと話聞いてくれてた」
木南さんが俯く。
「私が何言っても、途中で面倒くさがったりしなかったし」
その言葉を聞いた瞬間。
早手らしいなって、思った。
早手はそういう人だから。
本当に困ってる人を、簡単に放っておけない。
「……あの時も」
木南さんの声が少しだけ震えた。
「早手がいてくれて、すごく心強かった」
「…………」
胸の奥が、また痛くなる。
それでも私は何も言えなくて。
ただ、木南さんの話を聞いていた。
