beautiful love ★ 俺様boyと天然girl

水乃Side

「前から、家のこと少し聞いてたから」

早手の言葉が、頭の中に残る。

「家帰りたくないとか、そういう話。前からちょくちょく聞いてた」

「…………」

「夜に連絡来ることもあったし、放っとけない時もあったから」

知らなかった。

木南さんが、そんなことになってたなんて。

早手の腕の中にいるまま、私は何も言えなくなった。

今までずっと引っかかってたことが、少しずつ違う形に見えてくる。

木南さんから連絡が来てたことも。

早手が木南さんのことを気にしてたことも。

一緒にいるところを何度も見たことも。

私が思ってたような理由じゃなかったんだ。

「……水乃?」

「…………」

「……どうした?」

「……ううん」

そう答えたけど、頭の中は全然まとまってなかった。

「……そっか」

木南さん。

ずっと、そんなこと抱えてたんだ。

家に帰りたくないくらい辛くて、誰かに話したくても簡単には話せなくて。

そんな中で頼ったのが、早手だった。

「…………」

私の頭を撫でてくれてた早手。

私が泣いた時、何も言わずにそばにいてくれた早手。

昔からずっと、私が困った時には当たり前みたいに助けてくれてた。

そんな早手だから。

木南さんも、頼ったのかもしれない。

「……早手」

「ん?」

「木南さん……ずっと早手に相談してたの?」

「ずっとっていうか……まあ、何回か」

「……そっか」

「全部聞いてたわけじゃねぇよ。あいつもあんま話したがらなかったし」

それでも。

誰にも言えないことを、早手には話せたんだ。

夜に連絡するくらい。

家に帰りたくないって言えるくらい。

木南さんにとって、早手はきっと。

すごく大きな存在だったんだと思う。

「…………」

「水乃?」

また呼ばれて、私は早手の肩に置いていた手をゆっくり下ろした。

さっきまであんなに近くにいたかったのに。

今は、この腕の中に私がいることが、なんだかいけないことみたいに思えてくる。

「……もう、大丈夫?」

「え?」

「さっきより……少し落ち着いた?」

「……まあ」

「そっか」

よかった。

そう思うのに、胸の奥が少しだけ苦しくなる。

早手が好き。

今だって、こうして抱きしめられてるだけで嬉しい。

本当は、このままでいたい。

でも。

木南さんは今、家にも帰れない。

そんな時に。

私が早手を独り占めしてていいのかな。

「…………」

木南さんには。

早手がいなきゃダメなんじゃないのかな。