「もうちょっと……して」
「…………」
え……?
早手がそんなことを言うなんて思わなくて、すぐには動けなかった。
さっきは何も考えずに触れてしまったのに、今度は早手に言われてると思ったら、急に恥ずかしくなる。
「……してって……」
「さっきの」
「…………」
「頭」
やっぱり。
それのことなんだ。
「……嫌ならいいけど」
早手が少しだけ目を逸らす。
その顔を見たら、断るなんてできなかった。
「……嫌じゃないよ」
そう答えて、さっき離してしまった右手をもう一度伸ばした。
少しだけ迷ってから、早手の髪にそっと触れる。
今度は。
自分の意思で。
ゆっくり髪を撫でると、早手は何も言わずにまた私の肩へ顔を埋めた。
「…………」
どうしよう。
やっぱり心臓はすごくうるさい。
こんなこと。
付き合ってた時だって、したことない。
私が早手の頭を撫でて。
早手が私に甘えるみたいに、肩に顔を埋めてる。
いつもと。
全部逆。
「……早手」
「ん……」
小さな返事だけが返ってくる。
何があったの?って、もう一度聞こうと思えば聞けた。
でも。
今はやめた。
早手が話したくなるまで待とう。
そう思って、何も言わずにもう一度髪を撫でる。
少し汗で濡れた髪に指を通すように、ゆっくり。
何度か。
繰り返す。
「…………」
早手はずっと黙っていた。
でも、さっきまで張っていた肩の力が、少しずつ抜けていくのが分かる。
それがなんだか嬉しくて。
私はもう一度。
早手の頭を優しく撫でた。
「…………」
「……悪い」
「え――」
次の瞬間。
「っ!!!」
早手の腕が、私の背中に回った。
そのまま引き寄せられて、さっきまで少しだけ空いていた距離が一気になくなる。
「はやっ……て!?」
びっくりして。
思わず早手の名前を呼んだ。
でも。
早手は何も言わない。
私の肩に顔を埋めたまま、両腕で私を抱きしめてる。
「…………」
心臓が。
また一気にうるさくなる。
近い。
さっきより。
ずっと。
こんなふうに抱きしめられたら、嫌でも思い出す。
付き合ってた時のこと。
早手の腕の中にいるのが。
当たり前だった頃のこと。
「…………」
離れなきゃ。
今の私たちは。
もう。
付き合ってない。
頭では。
ちゃんと分かってる。
それなのに。
離してって。
言えなかった。
早手の腕に込められた力が、いつもと違ったから。
私を困らせようとしてるわけでも。
嫉妬して、強引になってるわけでもない。
ただ。
今は。
私にいてほしいんだって。
そんな気がした。
「…………」
だから。
それ以上は何も言わなかった。
早手の頭に添えていた手も。
離さなかった。
そのまま。
ゆっくり。
もう一度。
早手の髪を撫でる。
すると。
私を抱きしめる腕に。
ほんの少しだけ。
力がこもった。
「…………」
早手。
何があったの?
聞きたい。
でも。
今は。
このままでいい。
そう思って。
私は。
早手が自分から離れるまで。
その腕の中にいた。
「…………」
え……?
早手がそんなことを言うなんて思わなくて、すぐには動けなかった。
さっきは何も考えずに触れてしまったのに、今度は早手に言われてると思ったら、急に恥ずかしくなる。
「……してって……」
「さっきの」
「…………」
「頭」
やっぱり。
それのことなんだ。
「……嫌ならいいけど」
早手が少しだけ目を逸らす。
その顔を見たら、断るなんてできなかった。
「……嫌じゃないよ」
そう答えて、さっき離してしまった右手をもう一度伸ばした。
少しだけ迷ってから、早手の髪にそっと触れる。
今度は。
自分の意思で。
ゆっくり髪を撫でると、早手は何も言わずにまた私の肩へ顔を埋めた。
「…………」
どうしよう。
やっぱり心臓はすごくうるさい。
こんなこと。
付き合ってた時だって、したことない。
私が早手の頭を撫でて。
早手が私に甘えるみたいに、肩に顔を埋めてる。
いつもと。
全部逆。
「……早手」
「ん……」
小さな返事だけが返ってくる。
何があったの?って、もう一度聞こうと思えば聞けた。
でも。
今はやめた。
早手が話したくなるまで待とう。
そう思って、何も言わずにもう一度髪を撫でる。
少し汗で濡れた髪に指を通すように、ゆっくり。
何度か。
繰り返す。
「…………」
早手はずっと黙っていた。
でも、さっきまで張っていた肩の力が、少しずつ抜けていくのが分かる。
それがなんだか嬉しくて。
私はもう一度。
早手の頭を優しく撫でた。
「…………」
「……悪い」
「え――」
次の瞬間。
「っ!!!」
早手の腕が、私の背中に回った。
そのまま引き寄せられて、さっきまで少しだけ空いていた距離が一気になくなる。
「はやっ……て!?」
びっくりして。
思わず早手の名前を呼んだ。
でも。
早手は何も言わない。
私の肩に顔を埋めたまま、両腕で私を抱きしめてる。
「…………」
心臓が。
また一気にうるさくなる。
近い。
さっきより。
ずっと。
こんなふうに抱きしめられたら、嫌でも思い出す。
付き合ってた時のこと。
早手の腕の中にいるのが。
当たり前だった頃のこと。
「…………」
離れなきゃ。
今の私たちは。
もう。
付き合ってない。
頭では。
ちゃんと分かってる。
それなのに。
離してって。
言えなかった。
早手の腕に込められた力が、いつもと違ったから。
私を困らせようとしてるわけでも。
嫉妬して、強引になってるわけでもない。
ただ。
今は。
私にいてほしいんだって。
そんな気がした。
「…………」
だから。
それ以上は何も言わなかった。
早手の頭に添えていた手も。
離さなかった。
そのまま。
ゆっくり。
もう一度。
早手の髪を撫でる。
すると。
私を抱きしめる腕に。
ほんの少しだけ。
力がこもった。
「…………」
早手。
何があったの?
聞きたい。
でも。
今は。
このままでいい。
そう思って。
私は。
早手が自分から離れるまで。
その腕の中にいた。
