beautiful love ★ 俺様boyと天然girl

それから数日。

学校では、文化祭の話も少しずつ減ってきて。

いつもの毎日に戻り始めていた。

早手とは、あの日から何度か話した。

廊下ですれ違えば声をかけられたり。

部活中に目が合えば、普通に話したり。

別れてからずっとあった距離が、少しだけなくなったような気がする。

でも。

あの日みたいに、気持ちをぶつけてくることはなかった。

『俺の気持ち、分かってるよな……?』

あれだけは。

今でも思い出すたびに胸が落ち着かなくなる。

「水乃ー」

「ん?」

お昼休み。

机の上を片付けていると、慎が私のところへ来た。

「今日、購買行く?」

「行こうかな。パン買いたい」

「俺も行く。一緒行こ」

「うん」

教室を出て、慎と並んで廊下を歩く。

「今日何買おっかなー」

「慎、昨日も悩んでたよね」

「だって種類多いじゃん」

「結局いつも同じの買ってない?」

「……バレた?」

「バレるよ」

思わず笑う。

こういう慎との時間は、やっぱり楽しい。

変に気を遣わなくていいし。

何でも話せる。

購買でパンを買って、教室へ戻ろうとした時だった。

「なぁ、水乃」

「ん?」

隣を歩いていた慎が、何でもないように口を開く。

「今月らさ、後半に三連休あるだろ??休み、どっか行かん?」

「……え?」

思わず慎を見る。

「どっかって?」

「んー、まだ決めてないけど」

慎は少し考えてから、私を見る。

「映画でもいいし、買い物でもいいし」

「…………」

「水乃が行きたいとこでもいいよ」

「それって……」

言いかけて、止まる。

慎が少しだけ笑った。

「……2人で?」

「うん」

「…………」

その瞬間。

文化祭の日のことが頭をよぎった。

慎に好きだと言われたこと。

キスしたこと。

あれから慎は、私を急かしたりしなかった。

だけど。

「……デートってこと?」

聞くと、慎が一瞬だけ目を丸くする。

それから。

「うん」

いつものふざけた感じじゃなくて、まっすぐ私を見る。

「俺はそのつもり」

「……っ」

胸が跳ねた。

「嫌?」

「嫌じゃ……ないけど」

「じゃ、行こ」

「えっ」

「嫌じゃないならいいじゃん」

「でも……」

すぐには答えられなかった。

慎と出かけるのが嫌なわけじゃない。

むしろ。

きっと楽しい。

文化祭だって、すごく楽しかった。

だけど。

『慎んとこ行くなって』

「…………」

また。

こんな時まで。

「水乃?」

「……ごめん」

「ん?」

「ちょっと……考えてもいい?」

慎が一瞬だけ黙る。

「…………」

その顔を見たら、胸が痛くなった。

だけど慎はすぐに、いつものように笑った。

「いいよ」

「……慎」

「今すぐ決めろなんて言わないし」

「うん……」

「でも」

慎が私を見る。

「俺は、水乃と行きたいから誘ってる」

「……っ」

「そこだけは忘れないで」

「…………うん」

慎はそれ以上何も言わなかった。

また何でもない話をしながら、教室へ戻る。

だけど。

私の頭の中には。

慎の。

『俺は、水乃と行きたいから誘ってる』

その言葉と。

早手の。

『俺の気持ち、分かってるよな……?』

2人の声が。

ずっと残っていた。