慎と並んで、学校を出た。
文化祭の時みたいに人でいっぱいだった校内も、今日はもうすっかりいつもの学校に戻っている。
「今日の部活、疲れたー」
慎が大きく伸びをする。
「昨日文化祭だったのに、普通に練習するんだもんね」
「な。先生、容赦なさすぎ」
「でも慎、元気そうだったよ」
「そりゃ水乃が見てるから頑張ったし?」
「またそういうこと言う」
「え、本当だけど」
慎が笑う。
いつも通り。
こうして慎と話していると、私も普通に笑える。
「そういえば、体調もう大丈夫?」
「うん。今日は全然平気」
「ほんと?」
「ほんとだよ」
「ならよかった」
そう言って笑った慎を見て、私も笑い返す。
だけど。
『俺の気持ち、分かってるよな……?』
「…………」
また。
早手の声が頭の中に戻ってくる。
『慎と2人で帰んのも』
『慎がお前に触んのも』
『全部、嫌』
あんなこと言われたら。
忘れられるわけない。
「……水乃?」
「え?」
顔を上げると、慎がこっちを見ていた。
「何?」
「いや……」
慎が少しだけ目を細める。
「なんか今日、ぼーっとしてない?」
「そ、そう?」
「うん。さっきから何回か呼んでも反応遅いし」
「ごめん……」
「別に謝らなくていいけど」
慎はそう言って、少しだけ私の顔を覗き込む。
「やっぱまだ体調悪い?」
「違うよ。ほんとにもう大丈夫」
「……そっか」
「うん」
また歩き出す。
慎もそれ以上聞いてこなくて、しばらく何でもない話をしていた。
クラスの片付けで誰が全然動かなかったとか。
文化祭の売上が思っていたよりよかったとか。
私も笑いながら聞いていた。
それなのに。
少し気を抜くと、すぐに思い出す。
頬に触れた早手の手。
『……体調は?』
慎と帰ると知った時の、あからさまに嫌そうな顔。
『俺が嫌なのは、覚えとけ』
「…………」
「……水乃」
「ん?」
今度はすぐに返事をした。
でも。
慎はさっきまでみたいに笑っていなかった。
「……何?」
「…………」
少しだけ迷ったように黙ってから、慎が口を開く。
「早手と……なんかあった?」
「……っ」
思わず足が止まった。
「なんで……?」
「いや」
慎も立ち止まる。
「なんとなく」
「…………」
「今日の水乃、ずっと変だし」
「それだけで……?」
「それだけじゃないけど」
「え……?」
慎は私を見たまま、少しだけ黙る。
「さっき体育館で、早手と話してたじゃん」
「…………」
「俺が行った時も、なんか変な空気だったし」
「それは……」
何て言えばいいのか分からない。
昨日。
保健室で早手に言われたこと。
抱きしめられたこと。
私からも、早手を抱きしめたこと。
今日だって。
『俺の気持ち、分かってるよな……?』
全部、慎に言えるわけがない。
「……ちょっと、話しただけだよ」
やっと、それだけ答えた。
「……昨日も?」
「え……」
心臓が跳ねる。
慎は私の顔を見ていたけど、それ以上は何も聞いてこなかった。
「……そっか」
そう言って、また前を向く。
「慎……?」
「ん?」
今度はいつもの顔で笑った。
「帰ろ」
「……うん」
また慎の隣を歩き出す。
慎はもう何も聞いてこなかった。
その優しさに、少しだけ胸が痛くなる。
慎と一緒にいるのは楽しい。
文化祭の日だって。
今日だって。
慎といるのが嫌だったことなんて、一度もない。
キスだって。
嫌じゃなかった。
それなのに。
『俺の気持ち、分かってるよな……?』
「…………」
どうして。
こんなに早手のことばっかり。
考えちゃうんだろう。
文化祭の時みたいに人でいっぱいだった校内も、今日はもうすっかりいつもの学校に戻っている。
「今日の部活、疲れたー」
慎が大きく伸びをする。
「昨日文化祭だったのに、普通に練習するんだもんね」
「な。先生、容赦なさすぎ」
「でも慎、元気そうだったよ」
「そりゃ水乃が見てるから頑張ったし?」
「またそういうこと言う」
「え、本当だけど」
慎が笑う。
いつも通り。
こうして慎と話していると、私も普通に笑える。
「そういえば、体調もう大丈夫?」
「うん。今日は全然平気」
「ほんと?」
「ほんとだよ」
「ならよかった」
そう言って笑った慎を見て、私も笑い返す。
だけど。
『俺の気持ち、分かってるよな……?』
「…………」
また。
早手の声が頭の中に戻ってくる。
『慎と2人で帰んのも』
『慎がお前に触んのも』
『全部、嫌』
あんなこと言われたら。
忘れられるわけない。
「……水乃?」
「え?」
顔を上げると、慎がこっちを見ていた。
「何?」
「いや……」
慎が少しだけ目を細める。
「なんか今日、ぼーっとしてない?」
「そ、そう?」
「うん。さっきから何回か呼んでも反応遅いし」
「ごめん……」
「別に謝らなくていいけど」
慎はそう言って、少しだけ私の顔を覗き込む。
「やっぱまだ体調悪い?」
「違うよ。ほんとにもう大丈夫」
「……そっか」
「うん」
また歩き出す。
慎もそれ以上聞いてこなくて、しばらく何でもない話をしていた。
クラスの片付けで誰が全然動かなかったとか。
文化祭の売上が思っていたよりよかったとか。
私も笑いながら聞いていた。
それなのに。
少し気を抜くと、すぐに思い出す。
頬に触れた早手の手。
『……体調は?』
慎と帰ると知った時の、あからさまに嫌そうな顔。
『俺が嫌なのは、覚えとけ』
「…………」
「……水乃」
「ん?」
今度はすぐに返事をした。
でも。
慎はさっきまでみたいに笑っていなかった。
「……何?」
「…………」
少しだけ迷ったように黙ってから、慎が口を開く。
「早手と……なんかあった?」
「……っ」
思わず足が止まった。
「なんで……?」
「いや」
慎も立ち止まる。
「なんとなく」
「…………」
「今日の水乃、ずっと変だし」
「それだけで……?」
「それだけじゃないけど」
「え……?」
慎は私を見たまま、少しだけ黙る。
「さっき体育館で、早手と話してたじゃん」
「…………」
「俺が行った時も、なんか変な空気だったし」
「それは……」
何て言えばいいのか分からない。
昨日。
保健室で早手に言われたこと。
抱きしめられたこと。
私からも、早手を抱きしめたこと。
今日だって。
『俺の気持ち、分かってるよな……?』
全部、慎に言えるわけがない。
「……ちょっと、話しただけだよ」
やっと、それだけ答えた。
「……昨日も?」
「え……」
心臓が跳ねる。
慎は私の顔を見ていたけど、それ以上は何も聞いてこなかった。
「……そっか」
そう言って、また前を向く。
「慎……?」
「ん?」
今度はいつもの顔で笑った。
「帰ろ」
「……うん」
また慎の隣を歩き出す。
慎はもう何も聞いてこなかった。
その優しさに、少しだけ胸が痛くなる。
慎と一緒にいるのは楽しい。
文化祭の日だって。
今日だって。
慎といるのが嫌だったことなんて、一度もない。
キスだって。
嫌じゃなかった。
それなのに。
『俺の気持ち、分かってるよな……?』
「…………」
どうして。
こんなに早手のことばっかり。
考えちゃうんだろう。
