次の日。
教室に入ると、いつもと変わらない朝だった。
文化祭が終わったばかりだからか、教室ではまだ昨日の話で盛り上がっている。
「水乃、おはよー!」
「おはよう」
席に鞄を置いて、椅子に座る。
体調は昨日よりずっとよくなっていて、お腹の痛みもほとんどなかった。
「…………」
教科書を机の中に入れながら、ふと昨日のことが頭をよぎる。
『……好きなんだよ。』
思い出しただけで、胸の奥が苦しくなる。
あの時の早手の顔も、声も。まだ全部、頭に残ってる。
『……だから、諦めねぇから』
それに最後は――
私の方から、早手を抱きしめた。
「…………」
あの時は何も考えてなかった。
ただ、離れたくないって思った。
早手の胸に顔を埋めて、背中に腕を回して。
自分から離れたくないって思ったんだ。
「…………」
「……水乃?」
「…………」
「水乃ってば」
「えっ?」
顔を上げると、優希が心配そうに私を覗き込んでいた。
「まだ体調悪いんじゃないのー?」
「え?」
「さっきからずっとぼーっとしてるよ?」
「あ……ううん。大丈夫」
「ほんと?」
優希が私の額に手を当てる。
「熱はなさそうだけど……」
「昨日より全然大丈夫だよ」
「無理しちゃダメだからね?」
「うん」
「何? 水乃、まだ具合悪いの?」
声がして振り向くと、慎がこっちにやってきた。
「昨日ちょっと体調悪かったの。まだぼーっとしてるから」
優希がそう言うと、慎が私の顔を覗き込む。
「大丈夫?」
「うん。もう大丈夫だよ」
「どれ?」
「え?」
慎が私の前に少し屈んだ。
次の瞬間、慎の額が私の額に触れた。
「…………っ!?」
突然近くなった慎の顔に、思わず固まる。
「んー……熱はなさそう」
「ちょ、慎……!」
慌てて身体を引く。
「何だよ。熱あるか見ただけじゃん」
「それなら手でいいでしょ!」
「こっちの方が分かりやすくね?」
「分かんないよ!」
隣で優希が笑ってる。
「慎、距離近すぎ」
「そう?」
「そうだよ!」
もう……。
慎って、ほんとこういうところがある。
そう思いながら、何気なく顔を上げた時。
「…………っ」
教室の入り口に、早手がいた。
真澄と一緒に教室へ入ってきた早手と、目が合う。
「…………」
早手は何も言わない。
ただ一度。
私の隣にいる慎へ視線を向けて。
また、私を見る。
それだけ。
なのに。
『慎のところにも……行くな』
昨日の言葉が、頭の中に蘇った。
「…………っ」
早手の視線から逃げるように、私はそっと目を逸らした。
何も言われてないのに。
なぜか少しだけ、悪いことをしたような気持ちになった。
教室に入ると、いつもと変わらない朝だった。
文化祭が終わったばかりだからか、教室ではまだ昨日の話で盛り上がっている。
「水乃、おはよー!」
「おはよう」
席に鞄を置いて、椅子に座る。
体調は昨日よりずっとよくなっていて、お腹の痛みもほとんどなかった。
「…………」
教科書を机の中に入れながら、ふと昨日のことが頭をよぎる。
『……好きなんだよ。』
思い出しただけで、胸の奥が苦しくなる。
あの時の早手の顔も、声も。まだ全部、頭に残ってる。
『……だから、諦めねぇから』
それに最後は――
私の方から、早手を抱きしめた。
「…………」
あの時は何も考えてなかった。
ただ、離れたくないって思った。
早手の胸に顔を埋めて、背中に腕を回して。
自分から離れたくないって思ったんだ。
「…………」
「……水乃?」
「…………」
「水乃ってば」
「えっ?」
顔を上げると、優希が心配そうに私を覗き込んでいた。
「まだ体調悪いんじゃないのー?」
「え?」
「さっきからずっとぼーっとしてるよ?」
「あ……ううん。大丈夫」
「ほんと?」
優希が私の額に手を当てる。
「熱はなさそうだけど……」
「昨日より全然大丈夫だよ」
「無理しちゃダメだからね?」
「うん」
「何? 水乃、まだ具合悪いの?」
声がして振り向くと、慎がこっちにやってきた。
「昨日ちょっと体調悪かったの。まだぼーっとしてるから」
優希がそう言うと、慎が私の顔を覗き込む。
「大丈夫?」
「うん。もう大丈夫だよ」
「どれ?」
「え?」
慎が私の前に少し屈んだ。
次の瞬間、慎の額が私の額に触れた。
「…………っ!?」
突然近くなった慎の顔に、思わず固まる。
「んー……熱はなさそう」
「ちょ、慎……!」
慌てて身体を引く。
「何だよ。熱あるか見ただけじゃん」
「それなら手でいいでしょ!」
「こっちの方が分かりやすくね?」
「分かんないよ!」
隣で優希が笑ってる。
「慎、距離近すぎ」
「そう?」
「そうだよ!」
もう……。
慎って、ほんとこういうところがある。
そう思いながら、何気なく顔を上げた時。
「…………っ」
教室の入り口に、早手がいた。
真澄と一緒に教室へ入ってきた早手と、目が合う。
「…………」
早手は何も言わない。
ただ一度。
私の隣にいる慎へ視線を向けて。
また、私を見る。
それだけ。
なのに。
『慎のところにも……行くな』
昨日の言葉が、頭の中に蘇った。
「…………っ」
早手の視線から逃げるように、私はそっと目を逸らした。
何も言われてないのに。
なぜか少しだけ、悪いことをしたような気持ちになった。
