beautiful love ★ 俺様boyと天然girl

早手が保健室を出てから。

私はそのままベッドに横になっていた。

さっきより痛みは落ち着いてきたけど、
身体はまだ少し重い。

目を閉じると。

どうしても、さっきのことを思い出してしまう。

早手の声も。

触れられた頬も。

抱きしめた時の温もりも。

「…………」

布団を少しだけ顔まで引き上げる。

今は。

何も考えたくないのに。

頭から離れてくれなかった。

「水乃ー?」

しばらくして。

カーテンの向こうから、
聞き慣れた声がした。

「……優希?」

「よかった、起きてた」

カーテンを開けて、
優希が顔を覗かせる。

「大丈夫? まだ痛い?」

「ううん。だいぶマシになったよ」

「ほんと?」

「うん」

「ならよかったぁ……」

優希は安心したように息を吐いて、
ベッドのそばまでやってきた。

「片付け終わったよ」

「……ごめん。手伝えなくて」

「何言ってんの。そんなの気にしなくていいって」

「でも……」

「体調悪いんだから仕方ないでしょ」

優希はそう言って、
私の鞄を持ち上げた。

「帰れそう?」

「うん。もう大丈夫」

「じゃ、一緒に帰ろ」

「……うん」

ゆっくり身体を起こして、
ベッドから降りる。

少しだけお腹に違和感は残っているけど。

さっきみたいな痛みはもうなかった。

保健室を出て。

優希と並んで廊下を歩く。

文化祭が終わった校内は、
いつもよりずっと静かだった。

「あー、疲れたぁ」

優希が大きく伸びをする。

「でも楽しかったね、文化祭」

「うん」

「水乃、ほとんど最後寝てたけど」

「……それは言わないでよ」

「ふふ、ごめんごめん」

学校を出ても。

優希はいつも通りだった。

文化祭の話をしたり。

片付けが大変だったって話をしたり。

私も。

いつも通りに返していた。

早手のことは。

何も言わなかった。

まだ。

自分でもどうしたらいいのか、
分からなかったから。

ただ。

家に帰るまでずっと。

私の頭の中には。

あの時の早手の声が、
何度も繰り返されていた。