「水乃っ!? ……後ろっ……血……っ!?」
「……えっ……?」
優希の顔色が変わる。
何を言われたのか分からなくて、恐る恐るスカートの後ろに手を伸ばした。
「………っ!?」
嘘。
やだ。
なんで……?
まだ予定日じゃないのに……。
朝から何度か痛かったお腹。
さっきも、早手と木南さんを見ていたら急にきりきりし始めて。
てっきり、早手のことを気にしているからだと思っていた。
「……やだ……」
教室には、たくさんのお客さんがいる。
私の異変に気づいた人たちの視線が、少しずつこっちに集まってくる。
やだ。
見ないで……。
奥に引っ込みたいのに。
恥ずかしさで頭が真っ白になって、足が動かなかった。
「……っ!」
ズキンッと。
さっきまでとは比べものにならない痛みがお腹に走る。
「水乃っ! 誰か羽織るもの持ってきて! 早く!」
優希の声が教室に響く。
その声を聞いて、クラスの女の子たちがすぐに私のところへ集まってきた。
「水乃、大丈夫!?」
「とりあえず後ろ隠すから!」
「立てる? トイレ行こ?」
「……っ、痛い……」
立とうとしても。
またお腹が痛くなって、その場にしゃがみ込んでしまう。
「水乃!?」
「無理しないで!」
みんなが心配してくれている。
それなのに、周りから向けられる視線が恥ずかしくて、顔を上げることもできなかった。
「水乃、調子悪いのか!?」
「修原さん、大丈夫?」
今度は男子まで集まってくる。
「やっ……」
来ないで。
今は。
男の子には見られたくない。
「もう! 男子はいいから!」
「水乃の気持ち考えてあげて!」
「でも、顔色やばくない?」
「保健室連れてった方がいいだろ」
みんなが心配してくれているのは分かる。
でも。
今はそれすら恥ずかしくて。
「……大丈夫、だから……」
全然、大丈夫じゃない。
お腹は痛いし。
恥ずかしいし。
泣きそうになる。
「水乃?」
宗太まで異変に気づいて、こっちへやってきた。
「お前、顔色悪いけど大丈夫か?」
「宗太……っ」
「保健室行った方がいいんじゃね?」
そう言いながら、宗太が自分の上着を脱いで私に差し出してくれる。
「これ使えよ」
「……ありがと」
受け取ろうとした、その時。
「……っ!」
また。
強い痛みがお腹に走った。
「水乃!」
お腹を押さえたまま、さらに身体を小さくする。
もう嫌。
お願いだから。
誰も見ないで。
早く。
ここからいなくなりたい。
「ごめん、のいて」
「…………え?」
聞き慣れた声。
周りにいた子たちが少しずつ道を空けていく。
その向こうから。
早手が歩いてくる。
「水乃」
トクン――。
なんで。
なんで今……。
「早手……」
やだ。
来ないで。
こんなところ。
早手にだけは見られたくない。
早手は私の状況が分かっていないみたいで、しゃがみ込んでいる私を見て少し眉を寄せた。
それでも慌てることなく、いつもの早手のまま私のところへ近づいてくる。
「大丈夫か?」
「…………っ」
何週間ぶりだろう。
早手がこんなふうに私の名前を呼んで。
私だけを見てくれたのは。
でも。
今は嬉しいなんて思ってる場合じゃない。
「……大丈夫、だから」
お願い。
これ以上、近づかないで。
早手にだけは。
知られたくない。
