「ありがとうございましたー!」
お客さんを見送って、空いたグラスを片付ける。
休憩も終わって、教室はまた忙しくなっていた。
「水乃、これ外のテーブルお願い!」
「はーい!」
トレーを持って、教室の外へ出る。
廊下にもたくさんの人がいて、さっき慎と回っていた時よりもさらに賑やかになっていた。
「すみませーん! よかったら来てくださーい!」
少し離れたところから、聞き覚えのある声が聞こえた。
何となくそっちを見る。
「…………」
木南さん。
手には、うちのクラスのビラを何枚も持っていた。
その隣にいたのは――。
早手だった。
「早手、ちゃんと配ってよ」
「配ってる」
「全然減ってないじゃん」
「お前が持ってんの多すぎんだろ」
「じゃあ、これもあげる」
「いらねぇって」
「ほら、早く」
そう言いながら、木南さんが早手の持っているビラの上に自分の分を重ねる。
早手は嫌そうな顔をしているのに、それでもそのまま受け取っていた。
2人で並んで歩きながら。
時々言い合って。
またビラを配って。
……なんか。
恋人みたい。
そう思った瞬間。
また、お腹の奥がきりっと痛んだ。
「……っ」
思わず、お腹に手を当てる。
さっき優希と話していた時より、少し痛い。
……まただ。
さっきも、2人を見てた時に痛くなった。
やっぱり。
私、まだこんなに気にしてるんだ。
「神崎くーん!」
女の子の声が聞こえて、顔を上げる。
他のクラスなのか、他の学校なのか分からない女の子たちが、早手のところへ駆け寄っていた。
「まだビラ配ってるの?」
「ねぇ、終わったら一緒に回らない?」
「写真撮ろーよ!」
「……無理」
早手は、分かりやすく嫌そうな顔をする。
それでも女の子たちは気にしていないみたいで、早手の周りから離れない。
「ちょっとだけでいいじゃん!」
「ねぇ、神崎くんって彼女いるの?」
「…………」
思わず。
持っていたトレーをぎゅっと握った。
だけど。
早手が何か言うより先に。
「はいはいー。早手、まだ仕事中だから」
木南さんが、女の子たちの間に入った。
「ビラ配り終わってないし、まだやることあるから。ごめんねー」
「えー、ちょっとくらいいいじゃん」
「だーめ。ほら早手、行くよ」
木南さんが早手の腕を掴む。
「おい、引っ張んなって」
「だって早手、そのままいたらずっと捕まってるじゃん」
「俺のせいじゃねぇし」
「分かってるって。ほら、こっち」
そう言って。
木南さんは早手を連れていく。
女の子たちは残念そうにしていたけど。
そんな子たちから早手を守るみたいに、木南さんはずっと早手の隣を歩いていた。
……何それ。
まるで。
自分の彼氏に近づく女の子を追い払ってるみたい。
「…………っ」
また。
お腹がきりきりする。
さっきよりも、はっきり痛い。
胸までモヤモヤしてきて、何だか気持ち悪い。
早手の周りに女の子がいるだけなら。
前から何度も見てきた。
早手は昔から目立つし、こうやって声をかけられることだって珍しくなかった。
でも。
その女の子たちを木南さんが追い払って。
当たり前みたいに早手の隣に戻るのを見る方が、ずっと嫌だった。
「……もう」
見ない。
もう関係ないんだから。
そう思って、私は無理やり2人から視線を外した。
慎と手を繋いだ時。
嬉しかった。
もう少しこのままでいたいって、本当に思った。
なのに。
早手と木南さんを見ただけで、こんなに苦しくなる。
「……ほんと、やだ」
自分でも。
自分の気持ちが分からない。
「水乃ー! そっち終わった?」
「あっ……うん! 今戻る!」
教室から呼ばれて。
私はもう一度だけ、廊下の向こうを見る。
早手と木南さんは、まだ並んでビラを配っていた。
木南さんが何か言って、早手が面倒くさそうに返している。
その距離が。
やっぱり、恋人みたいに見えた。
「…………っ」
また、お腹が痛む。
私はお腹を押さえながら、小さく息を吐いた。
きっと。
早手を見たからだ。
そう思って。
それ以上は、気にしなかった。
お客さんを見送って、空いたグラスを片付ける。
休憩も終わって、教室はまた忙しくなっていた。
「水乃、これ外のテーブルお願い!」
「はーい!」
トレーを持って、教室の外へ出る。
廊下にもたくさんの人がいて、さっき慎と回っていた時よりもさらに賑やかになっていた。
「すみませーん! よかったら来てくださーい!」
少し離れたところから、聞き覚えのある声が聞こえた。
何となくそっちを見る。
「…………」
木南さん。
手には、うちのクラスのビラを何枚も持っていた。
その隣にいたのは――。
早手だった。
「早手、ちゃんと配ってよ」
「配ってる」
「全然減ってないじゃん」
「お前が持ってんの多すぎんだろ」
「じゃあ、これもあげる」
「いらねぇって」
「ほら、早く」
そう言いながら、木南さんが早手の持っているビラの上に自分の分を重ねる。
早手は嫌そうな顔をしているのに、それでもそのまま受け取っていた。
2人で並んで歩きながら。
時々言い合って。
またビラを配って。
……なんか。
恋人みたい。
そう思った瞬間。
また、お腹の奥がきりっと痛んだ。
「……っ」
思わず、お腹に手を当てる。
さっき優希と話していた時より、少し痛い。
……まただ。
さっきも、2人を見てた時に痛くなった。
やっぱり。
私、まだこんなに気にしてるんだ。
「神崎くーん!」
女の子の声が聞こえて、顔を上げる。
他のクラスなのか、他の学校なのか分からない女の子たちが、早手のところへ駆け寄っていた。
「まだビラ配ってるの?」
「ねぇ、終わったら一緒に回らない?」
「写真撮ろーよ!」
「……無理」
早手は、分かりやすく嫌そうな顔をする。
それでも女の子たちは気にしていないみたいで、早手の周りから離れない。
「ちょっとだけでいいじゃん!」
「ねぇ、神崎くんって彼女いるの?」
「…………」
思わず。
持っていたトレーをぎゅっと握った。
だけど。
早手が何か言うより先に。
「はいはいー。早手、まだ仕事中だから」
木南さんが、女の子たちの間に入った。
「ビラ配り終わってないし、まだやることあるから。ごめんねー」
「えー、ちょっとくらいいいじゃん」
「だーめ。ほら早手、行くよ」
木南さんが早手の腕を掴む。
「おい、引っ張んなって」
「だって早手、そのままいたらずっと捕まってるじゃん」
「俺のせいじゃねぇし」
「分かってるって。ほら、こっち」
そう言って。
木南さんは早手を連れていく。
女の子たちは残念そうにしていたけど。
そんな子たちから早手を守るみたいに、木南さんはずっと早手の隣を歩いていた。
……何それ。
まるで。
自分の彼氏に近づく女の子を追い払ってるみたい。
「…………っ」
また。
お腹がきりきりする。
さっきよりも、はっきり痛い。
胸までモヤモヤしてきて、何だか気持ち悪い。
早手の周りに女の子がいるだけなら。
前から何度も見てきた。
早手は昔から目立つし、こうやって声をかけられることだって珍しくなかった。
でも。
その女の子たちを木南さんが追い払って。
当たり前みたいに早手の隣に戻るのを見る方が、ずっと嫌だった。
「……もう」
見ない。
もう関係ないんだから。
そう思って、私は無理やり2人から視線を外した。
慎と手を繋いだ時。
嬉しかった。
もう少しこのままでいたいって、本当に思った。
なのに。
早手と木南さんを見ただけで、こんなに苦しくなる。
「……ほんと、やだ」
自分でも。
自分の気持ちが分からない。
「水乃ー! そっち終わった?」
「あっ……うん! 今戻る!」
教室から呼ばれて。
私はもう一度だけ、廊下の向こうを見る。
早手と木南さんは、まだ並んでビラを配っていた。
木南さんが何か言って、早手が面倒くさそうに返している。
その距離が。
やっぱり、恋人みたいに見えた。
「…………っ」
また、お腹が痛む。
私はお腹を押さえながら、小さく息を吐いた。
きっと。
早手を見たからだ。
そう思って。
それ以上は、気にしなかった。
