beautiful love ★ 俺様boyと天然girl

文化祭が始まると、教室には思っていた以上にたくさんのお客さんが入ってきた。

最初は恥ずかしかった衣装も、忙しく動いているうちに少しずつ気にならなくなってくる。

「水乃、3番テーブルお願い!」

「はーい!」

飲み物を持って、テーブルへ向かう。

そこに座っていたのは、他のクラスの男子が3人だった。

「お待たせしました」

「ありがとう」

テーブルに飲み物を置いて、そのまま戻ろうとした時。

「ねぇ? 何組?」

「えっ……」

急に聞かれて、思わず足を止める。

何組って。

ここで接客してるんだから――。

「お前、ここのクラスだからここの接客してるんじゃんー!」

「あ、そっか!」

「自分で聞いといて何それ!」

「間違えたんだって!」

男子たちが笑う。

私もつられて少し笑っていると、今度は別の男子がこっちを見た。

「名前教えてよー!」

「いや、、えっと……」

こういう時。

何て返せばいいんだろう。

困っていると、最初に話しかけてきた男子が続ける。

「名前くらいいいじゃん」

「彼氏いるー?」

「えっ……」

その言葉に。

一瞬だけ、早手の顔が浮かんだ。

「……そういう質問は……」

「何、秘密?」

「いや、秘密っていうか……」

「じゃあいるの?」

「それは……」

どう答えればいいのか分からない。

いない。

今は、それが正しい。

でも。

口にするのは、まだ少しだけ嫌だった。

「じゃあ連絡先教えてよ」

「えっ、それも……」

「ダメ?」

「いや……えっと……」

断りたいのに、上手い言葉が出てこない。

その時。

「水乃」

後ろから声がした。

振り返ると、慎がトレーを持って立っていた。

「何してんの?」

「えっと……」

「名前聞いてただけー」

私が答える前に、男子の1人が言う。

慎が男子たちを見た。

「ふーん」

「何、お前彼氏?」

「違うけど」

慎がすぐに答える。

分かっていたはずなのに。

その言葉を聞くと、少しだけ胸の奥が変な感じがした。

「じゃあいいじゃん」

「よくはない」

慎が私の持っていた空のトレーを取る。

「水乃、次呼ばれてる」

「え?」

「ほら、向こう」

見ると、別のテーブルのお客さんが手を上げていた。

「あ、ほんとだ」

「行ってきな」

「うん」

その場を離れようとすると。

「水乃ちゃんね!」

「えっ!?」

思わず振り返る。

男子たちが楽しそうに笑っていた。

「名前分かった!」

「慎!」

「俺じゃねぇし」

「慎が呼ぶからじゃん!」

確かに。

慎はさっきから普通に私の名前を呼んでいた。

「水乃ちゃん、あとで連絡先教えてよー!」

「だから、そういうのは……!」

また困っていると。

慎が私の背中を軽く押した。

「水乃、行くぞ」

「う、うん……」

そのまま慎と一緒に離れる。

少し歩いたところで、慎が私を見る。

「お前、断るの下手すぎ」

「だって、急に聞かれたから……」

「連絡先くらい普通に無理って言えばいいじゃん」

「分かってるけど……」

慎が小さく息を吐く。

それから、さっきの男子たちを一度だけ振り返った。

「……俺、ああいうの普通に嫌だから」

「え?」

「水乃が他の男に連絡先聞かれてんの」

「…………」

慎は。

こういうことも、もう隠さない。

「妬いてるってこと?」

「そうだけど」

「……普通に言うんだ」

「好きなの隠さないって言ったじゃん」

そんなふうに言われると。

また慎を意識してしまう。

「ほら、仕事戻るぞ」

「……うん」

慎が先に歩き出す。

その後ろを追いかけながら、さっきの質問を思い出した。

――彼氏いるー?

今は。

いない。

それなのに。

そう答えられなかった自分が、少しだけ引っかかっていた。