beautiful love ★ 俺様boyと天然girl

次の日。

教室に入ると、まだ来ている人は少なかった。

「おはよー」

「おはよ」

何人かに挨拶を返しながら、自分の席へ向かう。

早手は、もう来ていた。

最近はいつもそう。

朝も自主練をするようになってから、私が学校に着く頃にはもう教室にいる。

鞄を机の横にかけて、席に座る。

少しだけ、早手の方を見る。

早手はこっちを見ていなかった。

前だったら。

朝、家を出たところからずっと一緒だったのに。

今はこうして。

同じ教室にいても、話さないまま朝が始まることも増えた。

教科書を机の中に入れていると。

「早手」

聞こえてきた声に、手が止まった。

木南さん。

「ん?」

「今日もありがとう」

「ああ」

「朝早かったのに、ごめんね」

「別にいいって」

「でも、助かった」

「……ならいいけど」

朝?

なんとなく顔を上げる。

木南さんは早手の机の横に立っていた。

「明日も大丈夫?」

「明日?」

「うん」

「……たぶん」

「ほんと?」

「朝だろ?」

「うん」

「じゃあ大丈夫」

「よかった」

木南さんが嬉しそうに笑った。

「じゃあ、また連絡するね」

「ん」

連絡。

してるんだ。

――今日もありがとう。

――朝早かったのに、ごめんね。

何の話?

早手は朝、自主練してるんじゃないの?

木南さんが自分の席へ戻る。

早手はそのまま、机の上のスマホを触っていた。

こっちを見ることもない。

聞こうと思えば。

今、聞ける。

だけど。

結局、声をかけられなかった。

昨日までなら。

「何の話?」

って普通に聞けたかもしれない。

でも今は。

聞いても。

早手はきっと。

何でもないって言う。

そんな気がした。














その日の文化祭準備。

「水乃、これこっちでいい?」

「うん。そこ!」

「了解」

慎が飾りを貼って、私は少し離れたところから確認する。

「もうちょい右」

「こっち?」

「行きすぎ!」

「細けーな」

「慎が適当なの!」

「あははっ」

教室の中は、いつもより騒がしい。

みんなそれぞれの担当に分かれて、準備を進めていた。

「早手、ちょっと来て」

木南さんの声が聞こえた。

「ん?」

「これ、上届かない」

「あー、貸して」

早手が木南さんのところへ行く。

「どこ?」

「ここ」

「これ貼ればいい?」

「うん。もうちょっと右」

「ここ?」

「もうちょっと」

「細けぇな」

「ちゃんとやってよ」

「はいはい」

聞こえてきたやり取りに。

手が止まった。

……さっき。

私と慎も。

似たようなこと、話してた。

「水乃?」

「え?」

「テープ」

「あ、ごめん」

慎にテープを渡す。

「大丈夫?」

「うん」

「ぼーっとしてたじゃん」

「してないよ」

「してた」

「してないって」

「はいはい」

慎はそれ以上聞かず、また作業を始める。

私も目の前の飾りに手を伸ばした。

「早手、ありがと」

「ん」

「次これもお願いしていい?」

「いいよ」

また聞こえる。

最近。

木南さんが早手を呼ぶことが増えた。

早手も。

それが普通みたいに、木南さんのところへ行く。

朝も。

学校でも。

「…………」

――今日もありがとう。

――明日も大丈夫?

朝の会話が、また頭に浮かぶ。

学校でもこんなに一緒にいるのに。

朝まで。

何してるんだろう。

「水乃、次これ」

「……うん」

慎から飾りを受け取る。

気にしない。

そう思ってるのに。

気づけばまた。

早手と木南さんの方を見ていた。