文化祭まで、あと少し。
教室の中も少しずつ文化祭らしくなって、壁には作りかけの飾りが増えていた。
「水乃、それ取って」
「これ?」
「それそれ」
慎に言われて、机の上のテープを渡す。
「ちゃんと真っ直ぐ貼ってよ」
「分かってるって」
「さっきも曲がってたじゃん」
「水乃が細かすぎんだよ」
「慎が適当なの!」
「じゃあここ押さえて」
「はいはい」
最近、文化祭の準備で慎と一緒にいることが増えた。
同じ接客担当だし、朝も何度か途中で会って、そのまま一緒に学校まで来ている。
「もうちょいこっち」
「こっち?」
「そうそう」
「ちょっ、慎! 髪!」
「あ、悪い」
「痛いって!」
「ごめんって」
慎が笑うから、私もつられて笑う。
その時。
「水乃」
少し離れたところから早手に呼ばれた。
振り返ると、早手がこっちを見ている。
「なに?」
「ちょっと来て」
「今?」
「うん」
「慎、ちょっと待ってて」
「おー」
慎を残して、早手のところまで行く。
「どうしたの?」
「これさ、どっちがいいと思う?」
早手が見せてきたのは、呼び込みで使う看板だった。
「こっちじゃない?」
「やっぱ?」
「うん。そっちの方が見やすいと思う」
「俺もそう思ったんだけど、木南がこっちの方がいいって」
「じゃあ木南さんと決めたらいいじゃん」
「お前にも聞いただけ」
「じゃあ私はこっち」
「ん。分かった」
早手が看板を机に戻す。
「それだけ?」
「うん」
「じゃあ戻るね」
「……水乃」
「ん?」
また呼び止められて振り返る。
「今日さ」
「うん」
「慎と来た?」
「朝?」
「うん」
「来たよ。途中で会ったから」
「昨日も?」
「うん」
「その前も一緒だったよな」
「そうだったかな?」
「一緒だった」
「早手、よく覚えてるね」
「……別に」
早手が少しだけ視線を逸らす。
「最近多くね?」
「たまたまだよ」
「ふーん」
「なに?」
「何でもねぇ」
「変なの」
「……毎回一緒に来なくてもよくね?」
「なんで?」
「…………」
「早手?」
「いや、別に」
早手が私の後ろを見る。
その視線の先には慎がいた。
「水乃ー、これ次どうすんの?」
「あ、今行くー!」
慎に返事をして、戻ろうとした瞬間。
手首を掴まれた。
「え?」
振り返る。
「早手?」
「…………」
「なに?」
早手は私の手を掴んだまま、慎の方を見ている。
「慎、待ってるんだけど」
「……分かってる」
「じゃあ、どうしたの?」
「…………」
少しして。
「最近、慎ばっかじゃん」
「え?」
「朝も一緒だし、準備もずっと一緒だし」
「同じ担当なんだから仕方ないでしょ」
「分かってるけど」
「朝だって、途中で会うだけだよ」
「それも分かってる」
「じゃあ何?」
「…………」
早手が黙る。
掴まれていた手が、ゆっくり離れた。
「……もういい」
「なにそれ」
「いいから行けば」
「早手が止めたんじゃん」
「……うん」
珍しく素直に認めるから、少しだけ驚いた。
「水乃」
「ん?」
「……いや。何でもねぇ」
「変なの」
慎のところへ戻る。
少しして。
「早手、これ見てもらっていい?」
木南さんの声が聞こえた。
「うん」
早手が木南さんのところへ戻っていく。
私には、あんなこと言うのに。
早手だって。
最近ずっと、木南さんと一緒にいる。
教室の中も少しずつ文化祭らしくなって、壁には作りかけの飾りが増えていた。
「水乃、それ取って」
「これ?」
「それそれ」
慎に言われて、机の上のテープを渡す。
「ちゃんと真っ直ぐ貼ってよ」
「分かってるって」
「さっきも曲がってたじゃん」
「水乃が細かすぎんだよ」
「慎が適当なの!」
「じゃあここ押さえて」
「はいはい」
最近、文化祭の準備で慎と一緒にいることが増えた。
同じ接客担当だし、朝も何度か途中で会って、そのまま一緒に学校まで来ている。
「もうちょいこっち」
「こっち?」
「そうそう」
「ちょっ、慎! 髪!」
「あ、悪い」
「痛いって!」
「ごめんって」
慎が笑うから、私もつられて笑う。
その時。
「水乃」
少し離れたところから早手に呼ばれた。
振り返ると、早手がこっちを見ている。
「なに?」
「ちょっと来て」
「今?」
「うん」
「慎、ちょっと待ってて」
「おー」
慎を残して、早手のところまで行く。
「どうしたの?」
「これさ、どっちがいいと思う?」
早手が見せてきたのは、呼び込みで使う看板だった。
「こっちじゃない?」
「やっぱ?」
「うん。そっちの方が見やすいと思う」
「俺もそう思ったんだけど、木南がこっちの方がいいって」
「じゃあ木南さんと決めたらいいじゃん」
「お前にも聞いただけ」
「じゃあ私はこっち」
「ん。分かった」
早手が看板を机に戻す。
「それだけ?」
「うん」
「じゃあ戻るね」
「……水乃」
「ん?」
また呼び止められて振り返る。
「今日さ」
「うん」
「慎と来た?」
「朝?」
「うん」
「来たよ。途中で会ったから」
「昨日も?」
「うん」
「その前も一緒だったよな」
「そうだったかな?」
「一緒だった」
「早手、よく覚えてるね」
「……別に」
早手が少しだけ視線を逸らす。
「最近多くね?」
「たまたまだよ」
「ふーん」
「なに?」
「何でもねぇ」
「変なの」
「……毎回一緒に来なくてもよくね?」
「なんで?」
「…………」
「早手?」
「いや、別に」
早手が私の後ろを見る。
その視線の先には慎がいた。
「水乃ー、これ次どうすんの?」
「あ、今行くー!」
慎に返事をして、戻ろうとした瞬間。
手首を掴まれた。
「え?」
振り返る。
「早手?」
「…………」
「なに?」
早手は私の手を掴んだまま、慎の方を見ている。
「慎、待ってるんだけど」
「……分かってる」
「じゃあ、どうしたの?」
「…………」
少しして。
「最近、慎ばっかじゃん」
「え?」
「朝も一緒だし、準備もずっと一緒だし」
「同じ担当なんだから仕方ないでしょ」
「分かってるけど」
「朝だって、途中で会うだけだよ」
「それも分かってる」
「じゃあ何?」
「…………」
早手が黙る。
掴まれていた手が、ゆっくり離れた。
「……もういい」
「なにそれ」
「いいから行けば」
「早手が止めたんじゃん」
「……うん」
珍しく素直に認めるから、少しだけ驚いた。
「水乃」
「ん?」
「……いや。何でもねぇ」
「変なの」
慎のところへ戻る。
少しして。
「早手、これ見てもらっていい?」
木南さんの声が聞こえた。
「うん」
早手が木南さんのところへ戻っていく。
私には、あんなこと言うのに。
早手だって。
最近ずっと、木南さんと一緒にいる。
