「水乃が知らないだけでさ」
優希がレモンティーをテーブルに置く。
「早手って昔から、水乃のことになると分かりやすいんだよ」
「そうなの?」
「そうなの」
優希が呆れたように笑う。
「中学の時だって、水乃に近づこうとしてた男子いたでしょ?」
「……いたかな?」
「ほら。それすら知らない」
「え?」
「水乃のこと気になってそうな男子がいたら、早手が先に圧かけてたの」
「えぇ!?」
「話しかけようとしてたら、いつの間にか水乃の横にいたり」
「…………」
「一緒に帰ろうとしてる男子がいたら、先に水乃連れて帰ったり」
「そんなことしてたの!?」
「してたしてた」
全然。
知らなかった。
私にとっては。
昔から早手が隣にいるのが普通だったから。
「だからね」
優希が少し笑う。
「たとえ早手が他の女の子と話したり、一緒にいることがあったとしても」
「…………」
「あいつ、水乃が他の男子と一緒にいるの見ただけですぐ嫉妬する奴だから」
「……今日も?」
「今日なんて特にそうでしょ」
思い出す。
――可愛いだの、文化祭で告るだの、好き勝手言われてんのに。
――お前は普通に笑ってるし。
あれ。
やっぱり。
ヤキモチだったんだ。
「なんていうんだろ」
優希が少し考える。
「早手って、水乃が自分の目の届くところにいないと、昔からなんか落ち着かないんだよね」
「…………」
「水乃がどっか行ったらすぐ探すし」
「…………」
「誰といるか気にするし」
「…………」
胸の奥が。
小さく鳴った。
……早手が?
そんなの。
全然知らなかった。
「だから」
優希が私を見る。
「この前のことだって、なんか理由があって一緒にいたんじゃない?」
「…………」
「木南さん、泣いてたんでしょ?」
「……うん」
「だったら、何かあったのかもしれないし」
そう。
木南さんは。
泣いてた。
「もちろん、水乃に何も言わない早手も悪いよ」
「…………」
「水乃がこんなに不安になってること、あいつ絶対分かってないし」
「……うん」
「でも」
優希の声が少しだけ優しくなる。
「早手が水乃のこと好きなのまで、疑わなくていいと思う」
「…………」
「そこは心配しなくていいよ」
優希の言葉が。
ひとつずつ胸に入ってくる。
木南さんと自分を比べて。
勝手に自信をなくして。
早手の気持ちまで疑いそうになってた。
でも。
今日。
あんなにヤキモチを妬いて。
似合ってるって言ってくれた早手を思い出す。
「……うん」
私は小さく頷いた。
まだ。
分からないことはあるけど。
今は。
早手のことを信じてみようと思った。
