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「はぁ!?」
優希の大きな声が、部屋中に響いた。
「ちょっ、優希! 声大きいって!」
「だって、それどういうこと!?」
「シッ!!」
慌てて口元に人差し指を当てる。
「ゆ、優希……一応、早手の部屋、隣だから……聞こえちゃったら困る!」
「聞こえてもいいわよ!」
「よくないって!」
「あの糞鈍感男ぉぉ!!」
「優希っ、ダメだってば!」
部活が終わって。
今日は優希が、女子会がてら私の家に泊まりに来ることになっていた。
コンビニでお菓子と飲み物を買って。
晩ご飯もお風呂も済ませて。
私の部屋でいろんな話をしているうちに。
最近の私の様子がおかしいと、優希に問い詰められて。
私はとうとう。
ここ数日のことを全部話した。
教室に戻った時。
早手と木南さんが2人でいたこと。
木南さんが泣いていて。
早手の腕の中にいたこと。
そして最近。
早手が自主練のあとまで残っていて。
私には先に帰るように言うこと。
全部話し終えたところで。
今に至る。
「水乃!」
「は、はい!」
優希が目の前にあったレモンティーを一気に飲み干す。
「何で今まで黙ってたのよ!」
「だって……」
「だってじゃない!」
「優希、声!」
「今は声なんてどうでもいい!」
「よくないよぉ!」
本当に。
早手に聞こえたらどうしよう――。
「ていうか水乃」
「……なに?」
「それ見た時、早手に何も言わなかったの?」
「…………言ってない」
「なんで!?」
「だって……」
言えるわけなかった。
何してたの?
なんで木南さん抱きしめてたの?
どうして最近、私を先に帰らせるの?
聞きたいことはいっぱいある。
だけど。
「……怖いの」
「怖い?」
「うん」
もし。
聞いて。
自分が聞きたくない答えが返ってきたら。
そう思うと。
何も聞けなくなる。
「それに……木南さん、可愛いし」
「は?」
「今日のセーラー服も、すごい似合ってたし」
「ちょっと待って。なんでそうなるの」
「だって本当に可愛かったもん」
綺麗で。
大人っぽくて。
早手とも普通に話せて。
私が知らないことまで。
今の木南さんは知ってる。
「私なんかより、ずっと――」
「水乃!」
「ふえっ!?」
急に優希が前のめりになって。
私の顔を覗き込んできた。
「言っておくけど」
「う、うん」
「あんたも大概、可愛いから」
「…………」
「ていうか、あんたほど可愛い女、あたし今まで見たことないから。自信持ちな!」
「そ、そんなことないよ!」
「ある!」
「ないって!」
「あるの!」
即答される。
「だって私……今日のメイド服だって、全然自信なかったし」
「何言ってんの」
優希が呆れた顔をする。
「今日、教室戻った時の男子見てなかったの?」
「衣装が珍しかっただけでしょ?」
「違うから」
「でも……」
「しかも」
優希がニヤッとする。
「早手なんて、水乃入ってきた瞬間からずーっと見てたじゃん」
「…………え?」
「気づいてなかったの?」
「……うん」
「ほんっと鈍い」
「だって……」
そんなの。
知らなかった。
でも。
思い出したら。
少しだけ嬉しくなる。
「それに、似合ってるって言ってくれたんでしょ?」
「……うん」
「じゃあ何をそんなに自信なくしてんのよ」
「…………」
「水乃」
さっきまで怒っていた優希の声が。
少しだけ優しくなる。
「あたし、アイツが水乃に片想いしてた時のこと、知ってるから」
「……え?」
顔を上げる。
「片想い……?」
「うん」
優希はレモンティーをテーブルに置いて。
私を見る。
「早手はずっと、水乃のこと見てたよ」
「…………」
「水乃が思ってるより、ずっと前から」
そんなの。
初めて聞いた。
「……どういうこと?」
優希が少しだけ笑う。
「聞きたい?」
「……聞きたい」
私が頷くと。
優希はゆっくりと、昔の話を始めた。
