「ちょっ、早手……!」
手を引かれたまま、廊下を歩く。
「早手ってば!」
「…………」
全然止まってくれない。
人の少ない階段まで来て、やっと早手が足を止めた。
「……なに?」
「…………」
早手は何も言わず、私を見る。
顔から。
そのまま視線が下がって。
「……そのスカート、短すぎ」
「え?」
思わず自分のスカートを見る。
「これ?」
「それ以外何があんだよ」
「でも、こういう衣装なんだもん」
「それで接客すんの?」
「そうだよ?」
「……マジで?」
「うん」
早手の眉間に、さらに皺が寄る。
「もっと長いのないわけ?」
「多分ないよ。これSだし」
「じゃあ別のにすれば」
「白も同じくらいだと思うけど」
「…………」
「早手、この服嫌なの?」
「別に」
「じゃあなんで怒ってるの?」
「怒ってねぇよ」
「怒ってるじゃん」
「……お前が何も気にしてねぇからだろ」
「え?」
早手がこっちを見る。
「さっきから、どんだけ見られてたと思ってんの」
「見られてた?」
「ほら。それすら気づいてねぇじゃん」
「だって、みんな衣装見てただけじゃないの?」
「違ぇよ」
いつもより低い声。
「可愛いだの、文化祭で告るだの、好き勝手言われてんのに」
「…………」
「お前は普通に笑ってるし」
「だって褒めてもらったから……」
「だからってあんなニコニコすんなよ」
「えぇ!?」
「何」
「そんなこと言われても……」
「あとスカート触んな」
「え?」
「さっきから裾気にして触ってただろ」
「だって短いから!」
「余計見られてんの」
「そんなの知らないよ!」
「だから言ってんだろ」
なんで。
こんなに怒ってるんだろう。
でも。
ここまで言われたら。
さすがに分かる。
「……早手」
「何」
「もしかして、ヤキモチ?」
「違う」
即答。
「絶対そうじゃん」
「違うって」
「じゃあなんで私連れてきたの?」
「…………」
早手が黙る。
「みんなに見られてたから?」
「…………」
「告白するって言われてたから?」
「……うるせぇな」
「当たってる?」
「水乃」
「なに?」
「調子乗んな」
「乗ってないよ!」
「顔ニヤけてんじゃん」
「だって……」
ちょっと。
嬉しい。
「じゃあ、似合ってた?」
「…………」
「早手?」
「それ今聞く?」
「聞きたい」
早手が大きく息を吐く。
「……似合ってる」
「ほんと?」
「似合ってるからムカついてんだろ」
「…………」
「何」
「ううん」
「じゃあ戻るぞ」
早手が歩き出す。
「待って」
「何だよ」
「もう怒ってない?」
「怒ってねぇって」
「じゃあ本番もこれ着ていい?」
「…………」
また黙った。
「早手?」
「……知らね」
「なにそれ」
「好きにすれば」
そう言いながら。
ものすごく嫌そうな顔。
「じゃあ着るね」
「…………」
「接客頑張るね」
「…………」
「いっぱいニコニコするね」
「お前マジでやめろ」
すぐに返ってきて。
思わず笑った。
「やっぱりヤキモチじゃん!」
「うるせぇ!」
先に歩いていく早手の耳は。
真っ赤だった。
