文化祭まで、あと数日。
ホームルームが終わると、今日も教室に残れる人たちで準備が始まった。
部活が始まるまで、私たちも少しだけ手伝う。
「水乃、そっち持って」
「うん」
慎に言われて、作りかけのメニュー表の端を持つ。
「もうちょい上」
「これくらい?」
「そうそう」
慎がテープで留めていく。
「よし、できた」
「おー!」
「俺ら天才じゃね?」
「ほとんど私が作ったけど」
「は?」
「慎、テープ貼っただけじゃん」
「俺のテープ技術なめんなよ」
「なにそれ」
思わず笑う。
教室の中は、いつもより賑やか。
机を動かす音。
画用紙を切る音。
あちこちから聞こえる笑い声。
なんとなく。
こういう時間は好き。
「水乃、次これ――」
慎に呼ばれて顔を上げた時。
ふと。
少し離れたところにいる早手が目に入った。
呼び込み組の看板を作ってる。
その隣には。
木南さん。
「早手、これくらい?」
「もうちょい大きくていいんじゃね? 遠くから見えねぇし」
「じゃあ、このくらい?」
「うん。それなら見えると思う」
木南さんが文字を書いて。
早手が横から覗き込む。
「ここ、ちょっと空きすぎじゃね?」
「ほんと?」
「貸して」
早手がペンを受け取る。
木南さんもそのまま、早手の手元を覗き込んでいた。
近い。
前だったら。
木南さんと早手がこんなふうに普通に話してても。
きっと何も思わなかった。
「早手、これも書いて」
「なんで俺」
「早手の方が字大きく書けるから」
「それ理由になってねぇだろ」
「お願い」
「……分かったよ」
「ありがとう」
木南さんが笑う。
早手も。
嫌そうにしながら、普通に返してる。
「…………」
いつから。
あんなに普通に話すようになったんだろ。
「水乃?」
「え?」
慎の声で我に返る。
「これ、押さえて」
「あ、ごめん」
「さっきからどこ見てんの?」
「何でもない」
「ふーん」
もう1度、看板に目を落とす。
だけど。
気づけばまた。
早手の方を見てしまう。
木南さんが何か言って。
早手が答える。
また木南さんが笑う。
ただ。
同じ担当で。
文化祭の準備をしてるだけ。
それなのに。
あの日から。
2人が一緒にいるだけで。
どうしても、気になってしまう。
「そろそろ部活行くぞー!」
真澄の声が教室に響いた。
「あ、やべ」
慎が時計を見る。
「水乃、これあと頼んでいい?」
「うん」
「悪い!」
慎が先に教室を出ていく。
私も片付けようとした時。
「早手」
木南さんの声が聞こえた。
「ん?」
「これ、続き明日でもいい?」
「いいんじゃね? 今日結構進んだし」
「じゃあ明日、一緒にやろ」
「うん」
たったそれだけ。
だけど。
胸の奥が、また少しだけ重くなる。
明日も。
木南さんは早手の隣にいるんだ。
ホームルームが終わると、今日も教室に残れる人たちで準備が始まった。
部活が始まるまで、私たちも少しだけ手伝う。
「水乃、そっち持って」
「うん」
慎に言われて、作りかけのメニュー表の端を持つ。
「もうちょい上」
「これくらい?」
「そうそう」
慎がテープで留めていく。
「よし、できた」
「おー!」
「俺ら天才じゃね?」
「ほとんど私が作ったけど」
「は?」
「慎、テープ貼っただけじゃん」
「俺のテープ技術なめんなよ」
「なにそれ」
思わず笑う。
教室の中は、いつもより賑やか。
机を動かす音。
画用紙を切る音。
あちこちから聞こえる笑い声。
なんとなく。
こういう時間は好き。
「水乃、次これ――」
慎に呼ばれて顔を上げた時。
ふと。
少し離れたところにいる早手が目に入った。
呼び込み組の看板を作ってる。
その隣には。
木南さん。
「早手、これくらい?」
「もうちょい大きくていいんじゃね? 遠くから見えねぇし」
「じゃあ、このくらい?」
「うん。それなら見えると思う」
木南さんが文字を書いて。
早手が横から覗き込む。
「ここ、ちょっと空きすぎじゃね?」
「ほんと?」
「貸して」
早手がペンを受け取る。
木南さんもそのまま、早手の手元を覗き込んでいた。
近い。
前だったら。
木南さんと早手がこんなふうに普通に話してても。
きっと何も思わなかった。
「早手、これも書いて」
「なんで俺」
「早手の方が字大きく書けるから」
「それ理由になってねぇだろ」
「お願い」
「……分かったよ」
「ありがとう」
木南さんが笑う。
早手も。
嫌そうにしながら、普通に返してる。
「…………」
いつから。
あんなに普通に話すようになったんだろ。
「水乃?」
「え?」
慎の声で我に返る。
「これ、押さえて」
「あ、ごめん」
「さっきからどこ見てんの?」
「何でもない」
「ふーん」
もう1度、看板に目を落とす。
だけど。
気づけばまた。
早手の方を見てしまう。
木南さんが何か言って。
早手が答える。
また木南さんが笑う。
ただ。
同じ担当で。
文化祭の準備をしてるだけ。
それなのに。
あの日から。
2人が一緒にいるだけで。
どうしても、気になってしまう。
「そろそろ部活行くぞー!」
真澄の声が教室に響いた。
「あ、やべ」
慎が時計を見る。
「水乃、これあと頼んでいい?」
「うん」
「悪い!」
慎が先に教室を出ていく。
私も片付けようとした時。
「早手」
木南さんの声が聞こえた。
「ん?」
「これ、続き明日でもいい?」
「いいんじゃね? 今日結構進んだし」
「じゃあ明日、一緒にやろ」
「うん」
たったそれだけ。
だけど。
胸の奥が、また少しだけ重くなる。
明日も。
木南さんは早手の隣にいるんだ。
