「結局。
私は何も聞けないまま、校門まで来ていた。
いつも早手が待っている場所。
だけど。
そこに早手はいなかった。
「…………」
分かってる。
さっき教室にいたんだから、当たり前。
少しだけ待ってみる。
でも、早手は来ない。
……先に帰ろうかな。
そう思って歩き出した時。
「おい」
後ろから聞き慣れた声。
振り返る。
「……早手」
少し離れたところから、早手がこっちへ歩いてくる。
「何先に帰ろうとしてんだよ」
「だって……早手いなかったから」
「待ってろよ」
「……うん」
いつもと同じ。
何も変わらない早手。
「帰るぞ」
「うん」
早手の隣を歩き出す。
聞こう。
今なら聞ける。
そう思って、早手を見る。
「早手」
「ん?」
「…………」
木南さんと、何してたの?
どうして抱きしめてたの?
聞きたいのに。
言葉が出てこない。
「何?」
「……何でもない」
「変な奴」
「なにそれ」
早手は何も知らないみたいに、いつも通り歩いてる。
さっきまで。
木南さんを抱きしめていたのに。
「…………」
何か理由があったんだよね。
そう思いたい。
でも。
だったら、どうして。
早手は何も言ってくれないんだろう。
