部活が終わる少し前に、木南さんは先に帰っていった。
「修原さん、また明日ね」
そう言って、私にも普通に手を振って。
早手とは特に話すこともなく、そのまま体育館を出ていった。
そして部活が終わって。
片付けを済ませた私は、早手と一緒に学校を出た。
「疲れたぁー」
大きく伸びをすると、隣を歩いていた早手がこっちを見る。
「お前、今日そんな動いてねぇだろ」
「動いたよ! ドリンク作って、タオル渡して、ボール拾って……いっぱい働きましたー」
「はいはい」
「その言い方、絶対信じてないでしょ」
「信じてる信じてる」
「嘘っぽい!」
早手が少し笑う。
私もつられて笑って、それからしばらく並んで歩いた。
「……ねぇ、早手」
「ん?」
「あのさ」
昼間から少しだけ気になっていたことを思い出す。
「木南さんと仲良くなったの?」
「は?」
早手がこっちを見る。
「なんで」
「だって、早手って呼んでたから」
「あー……」
早手はそれだけで分かったらしい。
「なんか勝手にそう呼ぶって決められた」
「勝手に?」
「最初、早手くんって呼ばれて」
「うん」
「急に名前?って言ったら、じゃあ早手って呼ぶって」
「ふーん……」
そうだったんだ。
「いつの間にそんなに話すようになったの?」
「別に、そんな話してねぇよ」
「でも名前で呼ばれてるじゃん」
「だから、向こうが勝手に呼んでるだけ」
「そっかぁ」
補習の間、早手は放課後ずっと残ってたし。
木南さんも教室に残ってることがあったのかな。
同じクラスなんだから、話すことくらい普通にあるよね。
「何」
「え?」
「なんか気になんの?」
早手が私の顔を覗き込んでくる。
「ううん。気になっただけ」
「一緒だろ」
「違うよー。なんで早手って呼んでるんだろうって思っただけ!」
「ふーん」
「なにその顔」
「別に」
早手が少しだけ笑う。
「もしかして嫉妬?」
「ち、違うよ!」
「声でけぇ」
「早手が変なこと言うからでしょ!」
「はいはい」
「もう!」
恥ずかしくなって、少しだけ早足になる。
すると。
「水乃」
後ろから呼ばれて振り返る。
「何?」
「待てって」
すぐに追いついた早手が、当たり前みたいに私の隣に並ぶ。
「怒んなよ」
「怒ってないもん」
「怒ってんじゃん」
「怒ってませんー」
「じゃあこっち見ろよ」
「やだ」
「なんで」
「早手が意地悪だから」
そう言うと、早手がまた笑った。
「……水乃」
「なぁに」
「俺と木南、別に何もねぇから」
「…………」
思わず早手を見る。
「別に、そんなこと聞いてないよ?」
「でも気にしてんだろ」
「だから、ちょっと気になっただけだってば」
「それを気にしてるって言うんじゃねぇの」
「違うもん」
「はいはい」
またその言い方。
むっとして早手を睨むと、早手は全然気にしてないみたいに前を向いた。
「……帰り、コンビニ寄る?」
「え?」
「アイス食いたい」
「行く!」
さっきまでのことなんてすぐに忘れて、早手の隣に並ぶ。
「私いちごのやつにしよー」
「まだ売ってるか知らねぇぞ」
「なかったら早手の半分ちょうだい」
「嫌」
「なんでー!」
「自分の買えよ」
「ケチ!」
いつもと同じ帰り道。
いつもと同じ早手。
木南さんが早手を名前で呼んでいたことも、この時の私にとっては少し気になっただけだった。
早手が何もないって言うなら、それ以上考えるようなことでもなくて。
私はすぐに、今日食べるアイスのことで頭がいっぱいになっていた。
「修原さん、また明日ね」
そう言って、私にも普通に手を振って。
早手とは特に話すこともなく、そのまま体育館を出ていった。
そして部活が終わって。
片付けを済ませた私は、早手と一緒に学校を出た。
「疲れたぁー」
大きく伸びをすると、隣を歩いていた早手がこっちを見る。
「お前、今日そんな動いてねぇだろ」
「動いたよ! ドリンク作って、タオル渡して、ボール拾って……いっぱい働きましたー」
「はいはい」
「その言い方、絶対信じてないでしょ」
「信じてる信じてる」
「嘘っぽい!」
早手が少し笑う。
私もつられて笑って、それからしばらく並んで歩いた。
「……ねぇ、早手」
「ん?」
「あのさ」
昼間から少しだけ気になっていたことを思い出す。
「木南さんと仲良くなったの?」
「は?」
早手がこっちを見る。
「なんで」
「だって、早手って呼んでたから」
「あー……」
早手はそれだけで分かったらしい。
「なんか勝手にそう呼ぶって決められた」
「勝手に?」
「最初、早手くんって呼ばれて」
「うん」
「急に名前?って言ったら、じゃあ早手って呼ぶって」
「ふーん……」
そうだったんだ。
「いつの間にそんなに話すようになったの?」
「別に、そんな話してねぇよ」
「でも名前で呼ばれてるじゃん」
「だから、向こうが勝手に呼んでるだけ」
「そっかぁ」
補習の間、早手は放課後ずっと残ってたし。
木南さんも教室に残ってることがあったのかな。
同じクラスなんだから、話すことくらい普通にあるよね。
「何」
「え?」
「なんか気になんの?」
早手が私の顔を覗き込んでくる。
「ううん。気になっただけ」
「一緒だろ」
「違うよー。なんで早手って呼んでるんだろうって思っただけ!」
「ふーん」
「なにその顔」
「別に」
早手が少しだけ笑う。
「もしかして嫉妬?」
「ち、違うよ!」
「声でけぇ」
「早手が変なこと言うからでしょ!」
「はいはい」
「もう!」
恥ずかしくなって、少しだけ早足になる。
すると。
「水乃」
後ろから呼ばれて振り返る。
「何?」
「待てって」
すぐに追いついた早手が、当たり前みたいに私の隣に並ぶ。
「怒んなよ」
「怒ってないもん」
「怒ってんじゃん」
「怒ってませんー」
「じゃあこっち見ろよ」
「やだ」
「なんで」
「早手が意地悪だから」
そう言うと、早手がまた笑った。
「……水乃」
「なぁに」
「俺と木南、別に何もねぇから」
「…………」
思わず早手を見る。
「別に、そんなこと聞いてないよ?」
「でも気にしてんだろ」
「だから、ちょっと気になっただけだってば」
「それを気にしてるって言うんじゃねぇの」
「違うもん」
「はいはい」
またその言い方。
むっとして早手を睨むと、早手は全然気にしてないみたいに前を向いた。
「……帰り、コンビニ寄る?」
「え?」
「アイス食いたい」
「行く!」
さっきまでのことなんてすぐに忘れて、早手の隣に並ぶ。
「私いちごのやつにしよー」
「まだ売ってるか知らねぇぞ」
「なかったら早手の半分ちょうだい」
「嫌」
「なんでー!」
「自分の買えよ」
「ケチ!」
いつもと同じ帰り道。
いつもと同じ早手。
木南さんが早手を名前で呼んでいたことも、この時の私にとっては少し気になっただけだった。
早手が何もないって言うなら、それ以上考えるようなことでもなくて。
私はすぐに、今日食べるアイスのことで頭がいっぱいになっていた。
