【早手Side】
「ということで、来週から神崎くんは補習です」
「…………」
放課後。
職員室で担任と英語担当の教師につかまり、俺は来週一週間、放課後の補習を受けることになった。
出していなかった課題がいくつかあったらしく、月曜から金曜まで毎日。
しかも、部活より補習を優先しろとまで言われた。
めんどくせーー。
一週間も毎日とか、絶対行きたくねぇ。
慎と真澄はもう先に部活へ行っている。
俺も早く行かねぇと、水乃がまたうるさそうだ。
職員室を出て、教室に置いたままの鞄を取りに戻る。
ガラッ――。
教室の扉を開けると。
「……っ!!」
窓際にいた木南が、驚いたようにこっちを振り返った。
そのまま慌てて顔を逸らし、制服の袖で目元を拭う。
「…………」
一瞬、何してんのか分からなかった。
けど。
赤くなった目を見れば、さすがに分かる。
「……木南?」
「…………」
返事はない。
俺は扉の前に立ったまま、木南を見る。
少しして、木南がゆっくりこっちを向いた。
「……神崎くん」
いつもの落ち着いた声とは少し違う。
鼻にかかったような声だった。
「……見た?」
「……別に何も見てないけど?」
「…………」
木南が少しだけ目を見開いた。
「……忘れて」
「ん」
それだけ答えて、自分の席へ向かう。
何で泣いてんのかは知らない。
気にならないわけじゃないけど、本人が隠そうとしてることをわざわざ聞くつもりもなかった。
机の横に置いていた鞄を持ち上げ、そのまま教室を出ようとする。
「……神崎くん」
後ろから呼ばれて、足を止めた。
「ん?」
「神崎くんは……何してたの?」
「何が?」
「こんな時間まで。もうみんな部活とか行ってるでしょ?」
「ああ。先生に捕まってた」
「怒られてたの?」
「まあ」
「何したの?」
「課題出してなかった」
そう言うと、木南が少しだけ笑った。
「神崎くんでも、そういうことあるんだ」
「どういう意味だよ」
「なんとなく。何でもちゃんとできそうだから」
「勝手なイメージつけんな」
「ふふっ、ごめん」
さっきまで泣いていたせいか、その笑顔はまだ少しだけぎこちなかった。
「何の課題?」
「英語」
「あ、私、英語得意だよ」
「へぇ」
「だから、よかったら今度教えてあげる」
「……機会あったらな」
「うん」
時計を見る。
もう部活が始まる時間だ。
水乃に何言われるか分かんねぇ。
「じゃ、俺行くわ」
「あ、うん」
鞄を肩にかけ、教室を出ようとする。
「神崎くん」
もう一度呼ばれて振り返る。
「……部活、頑張ってね」
「ん」
それだけ返して、教室を出た。
結局、木南が何で泣いていたのかは聞かなかった。
聞いてほしくなさそうだったし、俺には関係ない。
ただ、転校してきた木南と初めてちゃんと話した。
この時は、本当にそのくらいにしか思っていなかった。
「ということで、来週から神崎くんは補習です」
「…………」
放課後。
職員室で担任と英語担当の教師につかまり、俺は来週一週間、放課後の補習を受けることになった。
出していなかった課題がいくつかあったらしく、月曜から金曜まで毎日。
しかも、部活より補習を優先しろとまで言われた。
めんどくせーー。
一週間も毎日とか、絶対行きたくねぇ。
慎と真澄はもう先に部活へ行っている。
俺も早く行かねぇと、水乃がまたうるさそうだ。
職員室を出て、教室に置いたままの鞄を取りに戻る。
ガラッ――。
教室の扉を開けると。
「……っ!!」
窓際にいた木南が、驚いたようにこっちを振り返った。
そのまま慌てて顔を逸らし、制服の袖で目元を拭う。
「…………」
一瞬、何してんのか分からなかった。
けど。
赤くなった目を見れば、さすがに分かる。
「……木南?」
「…………」
返事はない。
俺は扉の前に立ったまま、木南を見る。
少しして、木南がゆっくりこっちを向いた。
「……神崎くん」
いつもの落ち着いた声とは少し違う。
鼻にかかったような声だった。
「……見た?」
「……別に何も見てないけど?」
「…………」
木南が少しだけ目を見開いた。
「……忘れて」
「ん」
それだけ答えて、自分の席へ向かう。
何で泣いてんのかは知らない。
気にならないわけじゃないけど、本人が隠そうとしてることをわざわざ聞くつもりもなかった。
机の横に置いていた鞄を持ち上げ、そのまま教室を出ようとする。
「……神崎くん」
後ろから呼ばれて、足を止めた。
「ん?」
「神崎くんは……何してたの?」
「何が?」
「こんな時間まで。もうみんな部活とか行ってるでしょ?」
「ああ。先生に捕まってた」
「怒られてたの?」
「まあ」
「何したの?」
「課題出してなかった」
そう言うと、木南が少しだけ笑った。
「神崎くんでも、そういうことあるんだ」
「どういう意味だよ」
「なんとなく。何でもちゃんとできそうだから」
「勝手なイメージつけんな」
「ふふっ、ごめん」
さっきまで泣いていたせいか、その笑顔はまだ少しだけぎこちなかった。
「何の課題?」
「英語」
「あ、私、英語得意だよ」
「へぇ」
「だから、よかったら今度教えてあげる」
「……機会あったらな」
「うん」
時計を見る。
もう部活が始まる時間だ。
水乃に何言われるか分かんねぇ。
「じゃ、俺行くわ」
「あ、うん」
鞄を肩にかけ、教室を出ようとする。
「神崎くん」
もう一度呼ばれて振り返る。
「……部活、頑張ってね」
「ん」
それだけ返して、教室を出た。
結局、木南が何で泣いていたのかは聞かなかった。
聞いてほしくなさそうだったし、俺には関係ない。
ただ、転校してきた木南と初めてちゃんと話した。
この時は、本当にそのくらいにしか思っていなかった。
