「ここまでは合ってる」
早手が私のノートを指差す。
「で、これをこっちに持ってくればいい」
「……あ、そっか!」
さっきまで分からなかったのが嘘みたいに、今度はすんなり答えまで辿り着けた。
「できた!」
「ん。正解」
「やったぁ!」
「あと一問」
「まだあるの!?」
「それ終わったら終わり」
「じゃあ頑張る!」
最後の一問も早手に少し教えてもらいながら、どうにか解き終える。
「終わったぁー!」
シャーペンを置いて、そのまま机に突っ伏した。
「大袈裟」
「早手には分かんないよ、この達成感」
「ほとんど俺が教えただろ」
「それは……ありがとう」
「素直じゃん」
「私だってお礼くらい言えるもん」
顔を上げると、早手が少し笑っていた。
そこで。
早手の横に置かれている英語の問題集が目に入る。
「……あ」
「何」
「そういえば早手、英語は?」
「…………」
ほんの一瞬。
早手の目が逸れた。
「まだ終わってないんだ?」
「……あとでやる」
「ふーん?」
「何だよ」
さっきまで散々私の数学を馬鹿にしてたくせに。
これは仕返しするチャンスかもしれない。
「ちょっと見せて!」
早手の英語の問題集へ手を伸ばす。
「あ、おい」
あと少しというところで、早手に取り上げられた。
「何で取るの!」
「見るな」
「いいじゃん!」
「嫌」
「私の数学は散々見たくせに!」
「教えてやったんだろ」
「じゃあ今度は私が教えてあげる!」
「いらねぇ」
「何それ!」
早手が問題集を持ったまま立ち上がる。
「待って!」
私も立ち上がって手を伸ばすけど。
早手は私に取られないように、問題集を高く持ち上げた。
「返して!」
「俺のだろ」
「見せて!」
「嫌」
「早手!」
背伸びをしても届かない。
悔しくなって、早手の腕を掴みながらもう一度手を伸ばす。
「もうちょっと……!」
「諦めろって」
「絶対やだ!」
その瞬間。
足元にあったクッションを踏んだ。
「わっ……!」
身体がぐらっと傾いて、咄嗟に早手の服を掴む。
「おいっ――」
ドサッ。
「…………」
「…………」
背中に感じる柔らかい感触。
目の前には。
早手の顔。
いつの間にか私はベッドの上に倒れていて、そのすぐ上で早手が片腕をついていた。
「…………え」
近い。
そう思った途端、さっきまで何ともなかった心臓が急に大きな音を立て始める。
何度も入ったことのある部屋。
何度も二人きりで過ごしてきた場所。
なのに。
今は、いつもと全然違う。
「……早手」
「……何」
「近い……」
早手も私を見たまま、すぐには離れなかった。
早手が私のノートを指差す。
「で、これをこっちに持ってくればいい」
「……あ、そっか!」
さっきまで分からなかったのが嘘みたいに、今度はすんなり答えまで辿り着けた。
「できた!」
「ん。正解」
「やったぁ!」
「あと一問」
「まだあるの!?」
「それ終わったら終わり」
「じゃあ頑張る!」
最後の一問も早手に少し教えてもらいながら、どうにか解き終える。
「終わったぁー!」
シャーペンを置いて、そのまま机に突っ伏した。
「大袈裟」
「早手には分かんないよ、この達成感」
「ほとんど俺が教えただろ」
「それは……ありがとう」
「素直じゃん」
「私だってお礼くらい言えるもん」
顔を上げると、早手が少し笑っていた。
そこで。
早手の横に置かれている英語の問題集が目に入る。
「……あ」
「何」
「そういえば早手、英語は?」
「…………」
ほんの一瞬。
早手の目が逸れた。
「まだ終わってないんだ?」
「……あとでやる」
「ふーん?」
「何だよ」
さっきまで散々私の数学を馬鹿にしてたくせに。
これは仕返しするチャンスかもしれない。
「ちょっと見せて!」
早手の英語の問題集へ手を伸ばす。
「あ、おい」
あと少しというところで、早手に取り上げられた。
「何で取るの!」
「見るな」
「いいじゃん!」
「嫌」
「私の数学は散々見たくせに!」
「教えてやったんだろ」
「じゃあ今度は私が教えてあげる!」
「いらねぇ」
「何それ!」
早手が問題集を持ったまま立ち上がる。
「待って!」
私も立ち上がって手を伸ばすけど。
早手は私に取られないように、問題集を高く持ち上げた。
「返して!」
「俺のだろ」
「見せて!」
「嫌」
「早手!」
背伸びをしても届かない。
悔しくなって、早手の腕を掴みながらもう一度手を伸ばす。
「もうちょっと……!」
「諦めろって」
「絶対やだ!」
その瞬間。
足元にあったクッションを踏んだ。
「わっ……!」
身体がぐらっと傾いて、咄嗟に早手の服を掴む。
「おいっ――」
ドサッ。
「…………」
「…………」
背中に感じる柔らかい感触。
目の前には。
早手の顔。
いつの間にか私はベッドの上に倒れていて、そのすぐ上で早手が片腕をついていた。
「…………え」
近い。
そう思った途端、さっきまで何ともなかった心臓が急に大きな音を立て始める。
何度も入ったことのある部屋。
何度も二人きりで過ごしてきた場所。
なのに。
今は、いつもと全然違う。
「……早手」
「……何」
「近い……」
早手も私を見たまま、すぐには離れなかった。
