「早手、違うから……!」
声が震えた。
だけど。
早手は止まらなかった。
息を切らしたまま、真っ直ぐこっちへ向かってくる。
「早手……待って、本当に違――」
私の横を通り過ぎる。
次の瞬間。
「慎……っ!!」
慎の胸ぐらを掴んだ。
「……っ!」
そのまま、慎の身体を強く引き寄せる。
「早手!」
「お前……っ!」
早手の拳が上がった。
「早手、やめて!!」
ドンッ――――。
大きな花火の音と重なる。
振り下ろされそうになった腕を、慎が咄嗟に掴んだ。
「早手!」
「お前……何してんだよ!!」
早手は慎の胸ぐらを離さない。
「……早手」
「お前、知ってんだろ」
「…………」
「こいつが俺と付き合ってんの、知ってんだろ!!」
「……知ってる」
その瞬間。
早手が慎を強く突き飛ばした。
「だったら何でこんなことしたんだよ!!」
「……っ」
慎が一歩よろける。
早手は今にももう一度掴みかかりそうな勢いで、慎を睨みつけていた。
「早手、もうやめて!」
「来んな!」
「でも……!」
「お前は黙ってろ!」
怒鳴られて。
身体がびくっと止まる。
「……悪い」
慎が乱れた服を直しながら、早手を見る。
「俺が勝手にした」
「…………」
「こいつは悪くねぇよ」
「……は?」
「嫌がってた。だから、こいつに当たんな」
早手の顔が歪む。
「お前が言うなよ……」
「…………」
「お前がそれ言うなよ……っ!」
早手がまた慎に掴みかかろうとする。
「早手!」
慌てて腕を掴む。
「もうやめてよ!」
「離せ!」
「嫌!」
「離せって!」
強く振り払われる。
「……っ」
一歩よろける。
慎が咄嗟にこっちへ動いた。
「お前は来んな!」
早手が慎を睨む。
「…………」
慎の足が止まった。
荒い息だけが聞こえる。
早手も。
慎も。
何も言わない。
「……俺だって」
慎が低い声で呟いた。
早手が慎を見る。
「俺だって……ずっと我慢してんだよ」
「…………」
一瞬。
早手の動きが止まった。
「慎っ……お前……」
それ以上は言わなかった。
慎も。
何も答えない。
「…………」
早手がゆっくり慎の胸元から手を離す。
さっきまでより。
少しだけ呼吸が落ち着いていく。
でも。
怒ってないわけじゃない。
「……早手」
恐る恐る名前を呼ぶ。
早手がこっちを見る。
「違うの……」
「…………」
「本当に、違うから」
「何が」
低い声だった。
「慎は……悪くないの」
「…………」
早手の眉が動く。
「私、足痛くなっちゃって……」
「…………」
「早手のこと追いかけてたんだけど、見失っちゃって……それで慎が、これ以上歩くの無理だって……」
焦って。
うまく喋れない。
「ここに来たのだって、慎が私を休ませてくれただけなの」
「…………」
「だから……慎は悪くないよ」
その瞬間。
早手の顔が変わった。
「…………は?」
「え……」
「お前……今、そいつ庇ってんの?」
「違う! そうじゃなくて……!」
「何が違うんだよ」
「だって、慎は本当に私を心配してくれて――」
「もういい」
「……え?」
さっきまでとは違う。
怒鳴ってない。
早手の声が。
急に冷たくなった。
「早手、違うの。私が言いたいのは――」
「もういいって」
「…………」
早手が私を見る。
その目が。
今まで見たことがないくらい冷たい。
「……浮気女」
「…………え?」
頭の中が真っ白になる。
「……何……?」
聞き間違いだと思いたかった。
でも。
早手は目を逸らさなかった。
「浮気女」
「…………」
胸の奥が。
一瞬で冷たくなる。
「……早手……」
早手は何も答えなかった。
そのまま。
私に背を向ける。
「え……待って」
歩き出す。
「早手……!」
追いかけようとして。
ズキッ――。
「……っ」
足に痛みが走る。
それでも。
一歩、踏み出す。
「待って……早手!」
止まらない。
振り返ってもくれない。
「早手……!」
どんどん。
背中が遠くなる。
「…………」
追いかけたい。
ちゃんと違うって。
まだ何も伝えられてない。
なのに。
足が痛くて。
追いかけられない。
「……早手……」
夜空では。
何事もなかったみたいに、また大きな花火が開いた。
ずっと。
一緒に見たかった花火。
その下で。
早手の背中だけが。
どんどん遠くなっていった。
声が震えた。
だけど。
早手は止まらなかった。
息を切らしたまま、真っ直ぐこっちへ向かってくる。
「早手……待って、本当に違――」
私の横を通り過ぎる。
次の瞬間。
「慎……っ!!」
慎の胸ぐらを掴んだ。
「……っ!」
そのまま、慎の身体を強く引き寄せる。
「早手!」
「お前……っ!」
早手の拳が上がった。
「早手、やめて!!」
ドンッ――――。
大きな花火の音と重なる。
振り下ろされそうになった腕を、慎が咄嗟に掴んだ。
「早手!」
「お前……何してんだよ!!」
早手は慎の胸ぐらを離さない。
「……早手」
「お前、知ってんだろ」
「…………」
「こいつが俺と付き合ってんの、知ってんだろ!!」
「……知ってる」
その瞬間。
早手が慎を強く突き飛ばした。
「だったら何でこんなことしたんだよ!!」
「……っ」
慎が一歩よろける。
早手は今にももう一度掴みかかりそうな勢いで、慎を睨みつけていた。
「早手、もうやめて!」
「来んな!」
「でも……!」
「お前は黙ってろ!」
怒鳴られて。
身体がびくっと止まる。
「……悪い」
慎が乱れた服を直しながら、早手を見る。
「俺が勝手にした」
「…………」
「こいつは悪くねぇよ」
「……は?」
「嫌がってた。だから、こいつに当たんな」
早手の顔が歪む。
「お前が言うなよ……」
「…………」
「お前がそれ言うなよ……っ!」
早手がまた慎に掴みかかろうとする。
「早手!」
慌てて腕を掴む。
「もうやめてよ!」
「離せ!」
「嫌!」
「離せって!」
強く振り払われる。
「……っ」
一歩よろける。
慎が咄嗟にこっちへ動いた。
「お前は来んな!」
早手が慎を睨む。
「…………」
慎の足が止まった。
荒い息だけが聞こえる。
早手も。
慎も。
何も言わない。
「……俺だって」
慎が低い声で呟いた。
早手が慎を見る。
「俺だって……ずっと我慢してんだよ」
「…………」
一瞬。
早手の動きが止まった。
「慎っ……お前……」
それ以上は言わなかった。
慎も。
何も答えない。
「…………」
早手がゆっくり慎の胸元から手を離す。
さっきまでより。
少しだけ呼吸が落ち着いていく。
でも。
怒ってないわけじゃない。
「……早手」
恐る恐る名前を呼ぶ。
早手がこっちを見る。
「違うの……」
「…………」
「本当に、違うから」
「何が」
低い声だった。
「慎は……悪くないの」
「…………」
早手の眉が動く。
「私、足痛くなっちゃって……」
「…………」
「早手のこと追いかけてたんだけど、見失っちゃって……それで慎が、これ以上歩くの無理だって……」
焦って。
うまく喋れない。
「ここに来たのだって、慎が私を休ませてくれただけなの」
「…………」
「だから……慎は悪くないよ」
その瞬間。
早手の顔が変わった。
「…………は?」
「え……」
「お前……今、そいつ庇ってんの?」
「違う! そうじゃなくて……!」
「何が違うんだよ」
「だって、慎は本当に私を心配してくれて――」
「もういい」
「……え?」
さっきまでとは違う。
怒鳴ってない。
早手の声が。
急に冷たくなった。
「早手、違うの。私が言いたいのは――」
「もういいって」
「…………」
早手が私を見る。
その目が。
今まで見たことがないくらい冷たい。
「……浮気女」
「…………え?」
頭の中が真っ白になる。
「……何……?」
聞き間違いだと思いたかった。
でも。
早手は目を逸らさなかった。
「浮気女」
「…………」
胸の奥が。
一瞬で冷たくなる。
「……早手……」
早手は何も答えなかった。
そのまま。
私に背を向ける。
「え……待って」
歩き出す。
「早手……!」
追いかけようとして。
ズキッ――。
「……っ」
足に痛みが走る。
それでも。
一歩、踏み出す。
「待って……早手!」
止まらない。
振り返ってもくれない。
「早手……!」
どんどん。
背中が遠くなる。
「…………」
追いかけたい。
ちゃんと違うって。
まだ何も伝えられてない。
なのに。
足が痛くて。
追いかけられない。
「……早手……」
夜空では。
何事もなかったみたいに、また大きな花火が開いた。
ずっと。
一緒に見たかった花火。
その下で。
早手の背中だけが。
どんどん遠くなっていった。
