beautiful love ★ 俺様boyと天然girl

三人で屋台の並ぶ道を歩いていると。

「あっ! 水乃!」

突然、慎が大きな声を出した。

「な、なに!?」

「あれ!」

慎が指差した先には、大きな袋に入ったふわふわの綿あめが並んでいた。

「わぁ……!」

思わず声を上げると、慎が楽しそうに笑う。

「やっぱり。水乃、綿あめ好きだったよな」

「うん! 好き!」

「だと思った」

そう言うと、慎は私より先に綿あめの屋台へ向かっていった。

「え、慎?」

「これ一個ください!」

「ちょっと待って! 私、自分で買うよ!」

慌てて財布を出そうとすると、慎が「いいって」と私を止める。

「でも――」

「俺が買いたいだけだから」

「……いいの?」

「いいよ。ほら」

慎は受け取った綿あめを、そのまま私に差し出した。

「ありがとう、慎!」

大きな綿あめを受け取って、さっそく少しちぎって口に入れる。

「んー! 美味しい!」

「ははっ。水乃、昔からほんと好きだよな」

「だって美味しいもん」

「見た目も水乃っぽいし」

「どういう意味?」

「ふわふわしてる」

「なにそれ!」

慎がケラケラ笑うから、私もつられて笑ってしまう。

すると。

「あら、可愛い彼女さんねぇ」

屋台のおばさんの言葉に、一瞬きょとんとする。

「……え?」

彼女?

「あ、違います! 彼氏じゃな――」

「可愛いでしょー♪ 俺の彼女♪」

「ちょ、慎!?」

私の言葉に被せるように、慎がニコニコしながら答えた。

「何言ってんの!」

「いいじゃん、ちょっとくらい」

「よくないよ! 違いますからね!?」

慌てておばさんに言うと、慎は隣でケラケラ笑っている。

「水乃、必死すぎ」

「慎が変なこと言うからでしょ!」

「だって面白そうだったし」

「もう!」

慎の腕を軽く叩く。

「いてっ! 暴力反対!」

「自業自得!」

そんな私たちを見て、おばさんまで楽しそうに笑った。

「ふふ、仲良しねぇ」

「だから違うんですってば!」

もう。

慎ってば。

「…………あれ?」

そういえば。

早手は?

さっきまで、すぐ近くにいたはずなのに。

辺りを見回す。

たくさんの人。

いくつも並ぶ屋台。

その向こうに。

見慣れた後ろ姿を見つけた。

「……早手?」

もうあんなところにいる。

しかも。

こっちを振り返ることもなく、どんどん先へ歩いていく。

「ちょ、早手……!」

…………。

もしかして。

さっきの。

聞かれてた……?

『可愛いでしょー♪ 俺の彼女♪』

…………。

いやいやいや!

違うから!

「慎!」

「ん?」

「早手、行っちゃった!」

「え?」

慎も人混みの向こうを見る。

「あー……ほんとだ」

「どうしよう……」

早手の姿が、どんどん人の中に紛れていく。

「早手!」

呼んでも。

止まらない。

もう。

何で行っちゃうの……!

私は綿あめを持ったまま、慌てて早手のあとを追いかけた。

カラン、カラン。

急いだせいで下駄がうまく足についてこない。

「……っ」

痛い。

さっきより。

痛くなってる。

それでも。

このまま早手を見失う方が嫌で。

「早手、待って!」

人混みの向こうへ遠ざかっていく背中を追って、私は痛む足を必死に動かした。