【水乃Side】
隣町の花火大会にやってきた。
会場へ続く道にはたくさんの屋台が並んでいて、焼きそばやたこ焼きの匂いに、店員さんの大きな声や楽しそうな笑い声が混ざっている。
「ふあー……出店いっぱい!」
思っていたよりずっと人も多くて、少し気を抜いたらすぐにはぐれてしまいそう。
「優希、水乃。お前らはぐれんなよ」
真澄に言われて、「はーい!」と返事をする。
すると隣にいた優希が、少しだけ迷うように真澄を見た。
「……ねぇ、真澄」
「ん?」
「服……掴んでてもいい? はぐれそうだから」
「……っ、お、おう」
分かりやすいくらい真澄の顔が赤くなって、優希はそんな真澄の服の裾を掴みながら歩き始める。
いいなぁ。
私も。
早手と手、繋ぎたい。
そう思って、すぐ隣を歩いている早手を見る。
「…………」
早手は。
普通に歩いてる。
……どうしよう。
私から言う?
『手、繋ぎたい』
…………。
む、無理っ!
そんなの恥ずかしすぎる。
でも。
一応。
彼氏と彼女なんだし。
手くらい。
普通だよね?
ちらっ。
「…………」
気づかない。
もう一回。
ちらっ。
「…………」
全然。
気づかない。
もうちょっと。
ちらっ。
「……何」
「えっ」
突然。
早手がこっちを見た。
「さっきから何。チラチラ見てきて」
「な、何でもない!」
「何でもないなら見んなよ。気持ち悪ぃ」
カッチーン。
「……もういい!」
「は?」
「何でもないって言ってるでしょ!」
「何で怒ってんだよ」
「怒ってない!」
ふんっ。
早手から顔を逸らす。
もう。
早手のバカ。
ちょっとくらい。
気づいてくれたっていいじゃん。
……まあ。
何も言ってない私も悪いんだけど。
それでも。
優希と真澄を見たあとだから、余計に羨ましくなってしまう。
カラン。
カラン。
慣れない下駄で人混みの中を歩き続ける。
最初は何ともなかったのに、しばらくすると鼻緒が当たっているところが少しずつ痛くなってきた。
……痛い。
でも。
せっかくみんなで来たのに。
私一人のせいで止まりたくない。
大丈夫。
これくらい。
そう思って歩いていたけど、痛みをかばっているうちに少しずつみんなより遅れてしまう。
「……水乃?」
「ん?」
慎が振り返って、私のところまで戻ってきた。
「大丈夫?」
「何が?」
「何か歩くの遅くない?」
「そんなことないよ」
「いや、遅いって」
慎が私の足元を見る。
「下駄、痛いんじゃねぇの?」
「……大丈夫だよ」
「ほんとに?」
「ほんとに大丈夫だから」
そう言って笑うと、慎はまだ少し心配そうに私を見ていた。
すると。
「……水乃」
今度は早手に呼ばれて、そっちを見る。
「何?」
早手は私の顔を見たあと、ちらっと足元へ視線を落とした。
「……どっかで休むか?」
「いい!」
思ったより。
強い声が出た。
「……は?」
「全然大丈夫だから!」
本当は。
ちょっと痛い。
でも。
これくらいなら平気。
「お前、やっぱ足痛いんだろ?」
「痛くない!」
「いや、慎も――」
「大丈夫って言ってるでしょ!」
ふんっ。
早手から顔を逸らして。
また歩き出す。
「……何で怒ってんだよ」
「怒ってない!」
「いや、怒ってんじゃん」
「怒ってないもん!」
後ろから。
早手の小さなため息が聞こえた。
「意味分かんねぇ……」
知らない。
「水乃、やっぱ休んだ方がよくない?」
今度は慎。
「慎も大丈夫!」
「俺も!?」
その声に。
優希が吹き出す。
「もう、水乃ったら」
「ほんとに大丈夫だもん!」
そう言って。
私はまたみんなのあとを歩き出した。
「…………」
あれ……?
ふと前を見る。
「……優希と真澄は?」
さっきまで少し前を歩いていたはずの二人が。
いない。
「え、どこ行ったの?」
辺りを見回してみても、人が多すぎて全然見つけられない。
「さっきまでいたよね?」
私が慎を見ると、慎も辺りを見回した。
「あー……あの二人なら、たぶん二人でどっか行ったんじゃね?」
「えっ!?」
「いい感じだったし」
「…………」
そう言われて。
さっき真澄の服を掴んでいた優希を思い出す。
……なるほど。
「じゃあ、邪魔しない方がいいね」
「だな」
慎と顔を見合わせて笑う。
「…………」
「何?」
横を見ると。
早手が何となく不機嫌そうな顔をしていた。
「別に」
「……変な早手」
「うるせぇ」
結局。
優希と真澄を探すのはやめて。
私たちは三人で屋台の並ぶ道を歩き始めた。
隣町の花火大会にやってきた。
会場へ続く道にはたくさんの屋台が並んでいて、焼きそばやたこ焼きの匂いに、店員さんの大きな声や楽しそうな笑い声が混ざっている。
「ふあー……出店いっぱい!」
思っていたよりずっと人も多くて、少し気を抜いたらすぐにはぐれてしまいそう。
「優希、水乃。お前らはぐれんなよ」
真澄に言われて、「はーい!」と返事をする。
すると隣にいた優希が、少しだけ迷うように真澄を見た。
「……ねぇ、真澄」
「ん?」
「服……掴んでてもいい? はぐれそうだから」
「……っ、お、おう」
分かりやすいくらい真澄の顔が赤くなって、優希はそんな真澄の服の裾を掴みながら歩き始める。
いいなぁ。
私も。
早手と手、繋ぎたい。
そう思って、すぐ隣を歩いている早手を見る。
「…………」
早手は。
普通に歩いてる。
……どうしよう。
私から言う?
『手、繋ぎたい』
…………。
む、無理っ!
そんなの恥ずかしすぎる。
でも。
一応。
彼氏と彼女なんだし。
手くらい。
普通だよね?
ちらっ。
「…………」
気づかない。
もう一回。
ちらっ。
「…………」
全然。
気づかない。
もうちょっと。
ちらっ。
「……何」
「えっ」
突然。
早手がこっちを見た。
「さっきから何。チラチラ見てきて」
「な、何でもない!」
「何でもないなら見んなよ。気持ち悪ぃ」
カッチーン。
「……もういい!」
「は?」
「何でもないって言ってるでしょ!」
「何で怒ってんだよ」
「怒ってない!」
ふんっ。
早手から顔を逸らす。
もう。
早手のバカ。
ちょっとくらい。
気づいてくれたっていいじゃん。
……まあ。
何も言ってない私も悪いんだけど。
それでも。
優希と真澄を見たあとだから、余計に羨ましくなってしまう。
カラン。
カラン。
慣れない下駄で人混みの中を歩き続ける。
最初は何ともなかったのに、しばらくすると鼻緒が当たっているところが少しずつ痛くなってきた。
……痛い。
でも。
せっかくみんなで来たのに。
私一人のせいで止まりたくない。
大丈夫。
これくらい。
そう思って歩いていたけど、痛みをかばっているうちに少しずつみんなより遅れてしまう。
「……水乃?」
「ん?」
慎が振り返って、私のところまで戻ってきた。
「大丈夫?」
「何が?」
「何か歩くの遅くない?」
「そんなことないよ」
「いや、遅いって」
慎が私の足元を見る。
「下駄、痛いんじゃねぇの?」
「……大丈夫だよ」
「ほんとに?」
「ほんとに大丈夫だから」
そう言って笑うと、慎はまだ少し心配そうに私を見ていた。
すると。
「……水乃」
今度は早手に呼ばれて、そっちを見る。
「何?」
早手は私の顔を見たあと、ちらっと足元へ視線を落とした。
「……どっかで休むか?」
「いい!」
思ったより。
強い声が出た。
「……は?」
「全然大丈夫だから!」
本当は。
ちょっと痛い。
でも。
これくらいなら平気。
「お前、やっぱ足痛いんだろ?」
「痛くない!」
「いや、慎も――」
「大丈夫って言ってるでしょ!」
ふんっ。
早手から顔を逸らして。
また歩き出す。
「……何で怒ってんだよ」
「怒ってない!」
「いや、怒ってんじゃん」
「怒ってないもん!」
後ろから。
早手の小さなため息が聞こえた。
「意味分かんねぇ……」
知らない。
「水乃、やっぱ休んだ方がよくない?」
今度は慎。
「慎も大丈夫!」
「俺も!?」
その声に。
優希が吹き出す。
「もう、水乃ったら」
「ほんとに大丈夫だもん!」
そう言って。
私はまたみんなのあとを歩き出した。
「…………」
あれ……?
ふと前を見る。
「……優希と真澄は?」
さっきまで少し前を歩いていたはずの二人が。
いない。
「え、どこ行ったの?」
辺りを見回してみても、人が多すぎて全然見つけられない。
「さっきまでいたよね?」
私が慎を見ると、慎も辺りを見回した。
「あー……あの二人なら、たぶん二人でどっか行ったんじゃね?」
「えっ!?」
「いい感じだったし」
「…………」
そう言われて。
さっき真澄の服を掴んでいた優希を思い出す。
……なるほど。
「じゃあ、邪魔しない方がいいね」
「だな」
慎と顔を見合わせて笑う。
「…………」
「何?」
横を見ると。
早手が何となく不機嫌そうな顔をしていた。
「別に」
「……変な早手」
「うるせぇ」
結局。
優希と真澄を探すのはやめて。
私たちは三人で屋台の並ぶ道を歩き始めた。
