「おはよう、東条くん」


「おはよう」


「ヤバい!東条くん今日も超かっこいい!」


「だよねー!」



その王子、ニセモノですから!
実はものすごく腹黒いですから!
黄色い声をあげる女の子たちに、わたしは声を大にして叫んでしまいたい。


でも、それを言うと、わたしはとてもバカにされるし、何より怖いのは、あの腹黒野郎の餌食になるということ。
多分、超笑顔でわたしの頭をわしづかみ、そのまま力の限り頭を潰しにかかってくるだろう。



東条くんの裏の顔を知った昨日から、一晩明けて今日。
わたしは昨日のことは夢だと朝目が覚めた時に願ったのだ。
しかし、東条くんはやっぱり腹黒だった。



「おはよう、奴隷さん」


「もう!わたしはどっ」



いつもより低く耳元で囁かれる声に一瞬ドキリと胸が高鳴ったが、言われた言葉を頭の中で理解すると、その気持ちも枯れてしまった。
急いで反論しようとすると、すぐに東条くんの手で口をふさがれてしまった。
いや、これは手で口をふさぐレベルじゃなくて、顔を掴まれてるって言うんですよねー。
ってか、顔は笑ってるのに、目は笑ってませんよー。



とにかく、朝からそんなことがあったわたしはやっぱり今日一日中授業になんて集中出来なかった。