学校は全寮制で半年間の間に様々なことを学ぶ。

立ち振る舞い、マナー、身だしなみ、ハウスキーピングなど。

マーキング氏の学校は街からそう離れない一等地にあり、優美な門に薔薇がつたっていた。

正門を通ると噴水の広間がある。
綺麗な芝生を踏まないよう石畳の道を歩く。

玄関のベルをお付きの者が鳴らすとメイドが出てきた。

『本日いらっしゃる予定のティアラ・グレゴリー様でしょうか。』

侍従が手続きをしている間にティアラはお屋敷をみた。

これから半年間過ごす家はどんなところか気になるのだ。

『お嬢様。メイドがご案内するそうです。』

そうティアラは言われ、振り返る。

メイドの後を追っていくと広々とした玄関、食堂、ホールなどがあり申し分なかった。


『ここがグレゴリー夫人のルームになります。』

部屋は二十畳ほどの広さで暖炉、一人がけのチェアがひとつに2人がけのソファが前にある。優美なローテーブルが添えられてキャビネットが一つ。キャビネットには素敵な食器が並んでいた。床の絨毯は華やかで上品。小さめのラウンドテーブルに見事な薔薇が咲いていた。


ティアラは薔薇に近づくとうっとりした。

淡いピンクのカードが添えてあり、ステファン・グレゴリーのサイン。


《愛しい君へ》
しばらく君と離れるけれどすぐに会いにいくよ。

ステファン・グレゴリー


ティアラは赤面してカードをそっとクラッチバッグに入れた。

メイドは涼しい顔で彼方の方向をみる。

不安だった生活もカードをみたら払拭されてしまった。

部屋はバスルーム、キッチン、寝室完備。

きっと上手くいく。
キラキラと輝いた日々が待っている。

ティアラはそう思った。