それなりに大きな音がして教室の扉が開く。
この朝礼が始まるか始まらないかのギリギリな時間にあるのが服装検査だ。
でも、今日は抜き打ちじゃない。
前もって聞いている。


なのに凛があきらかな校則違反をしているのにはちゃんと理由があった。



「おい、凛は校則を知らないのか?」


「だって、こっちの方が可愛いじゃん!」



そう、凛はこの風紀委員長の渡辺奏太が好きだった。
憎まれ口を叩く凛の頬はやはり赤らんでいた。
すげームカつく。


凛は渡辺奏太の気を引く為に、服装検査の時のみ校則違反を繰り返している。
なんて不器用なやつなんだろう。
凛も、俺も。



「凛、スカート折るなよ!」


「奏太くんのセクハラー!」


「なっ…!」



もうこの掛け合いもウチのクラスじゃ当たり前になっていて、教室中に笑いが起きている。
多分、不機嫌なやつなんて俺だけだ。
でも、つまらない、気にくわない。
この世の中に、好きな女が他の男にちょっかいかけているのを喜んで見る男がどこにいるだろうか。
そんなやついるわけがない。



とにかく俺は服装検査の間ずっと不機嫌な顔をしていた。
凛が少しでも気にかけてくれるようにと祈りながら。