「祐輔、おはよう。早く行かないと遅刻するよ!」


「遅刻常連者のお前に言われたくねぇよ」


「あ、ひどーい!祐輔なんて遅刻しちゃえ!」



コイツは松山凛。
黙っていれば美人なのに遅刻常連者で、風紀委員の抜き打ち検査にも毎回ひっかかる、ちょっと残念なやつ。


底抜けに明るくて、騒がしいやつでもある。
そして、俺の好きなやつだったりもする。


入学当初は出会った時とのギャップがあり過ぎてびっくりしたもんだ。
まぁ、今では慣れたけどな。



「やっば!このままじゃ本当に遅刻しちゃう!走るよ、祐輔!」


「おい、ちょっと待てって!」



いきなり俺の手首を掴んで走り出す凛。
コイツはこういう時だけやたら足が速い。


掴まれた手首が熱い。
高鳴る心臓は走っているせいか、凛のせいか。
どれだけウブなんだと言われればそれまでだが、それほどに俺は凛に本気だと胸を張って言える。


走る、走る、目の前で凛のポニーテールが揺れている。
コイツは遅刻する、としか考えてないんだろう。
俺がどんな気持ちでいるのか分からせてやりたいよ。