少しして、私を掴む力が緩んだ。 ―――瞬間。 先生に抱き付いた。 「姫野さん…」 「先生……しばらくこのままでいてもいいですか…?」 背中に回した手に、力を込めた。 「少しだけですよ」 小さく答えた先生が、優しく私を抱き締めてくれる。 それだけで、私は…… 「……好き」 あの日から。 先生の香り、温もり、全てが欲しくて堪らなかった。 やっと……先生に触れられた。 それだけなのに、こんなにも幸せで…… .