一人準備室でいると、遠くから足音が聞こえてきた。 途端に、緊張が走る。 足音が近付いて、この教室の前で止まり――… 開いたドアから見えたのは、先生の姿。 「姫野さん」 私の姿を見つけ、いつもの表情ない顔で私の名を呼ぶ。 その姿に、私はよろけながら走り出した。 「な、に…っ」 初めての、先生の動揺した声。 「せんせ…」 ギュッと、白衣を掴んでその胸に顔を埋める。 その甘い香りに、何故か、安心した――― .