「……気にするな」



そう言いながら私の頭を優しく撫で車を走らせる。


私は流れる車窓を見ながら、見たことのない景色だと気付いた。



「どこに向かってるの…?」



消え入りそうなその声に、兄様は私をチラッと見た。



「俺の家。
 先に言っとくけど、片付ける暇無かったから散らかってるよ。

 というわけで、キレイにしてね」


フッと笑って前を見た兄様に、私は小さく頷く。


その拍子に、ポロッと一滴涙が落ちた。











―――お祖父様の、最後の鋭い瞳が焼き付いて……


やっぱり、私はお祖父様にとって、必要無い存在なんだ。




……おばあちゃまの無事な姿を、一目だけでも見たかった。