「ちょっと、早くしなさいよ」 私の足が止まったのを苛ついた声で抗議する愛華さんに、私は応えられない。 その愛華さんの声に、ゆっくり目の前の老人が振り向いた。 瞬間、その皺がさらに深くなる。 「何故お前がここにいる」 私を見下ろす瞳は、いつも同じ。 汚いものでも見るような、蔑んだ目。 「お祖父様……ご機嫌よう」 笑顔、作れてる…? 「……誰の許しを得てここにいる」 「お祖父様、さくらは私が」 「忍は黙っていろ」 睨みつけるお祖父様に、忍兄様はそれ以上口を開けなかった。 .