「そんなに酷いですか?」
「ええ、それはもう。
マスカラもアイライナーも滲んで酷い有様よ。
これじゃあ百年の愛も冷めるわね」
わざと意地悪い顔で言う愛華さんに、今度は声を出して笑った。
「酷いです」
「あら、酷いのはあなたの顔よ?」
砕けた会話に、自然に力が抜ける。
そうこうしているうちに化粧直しが終わり、愛華さんはニッコリ微笑んだ。
「これでいいわ。
さて、そろそろ会場に戻りましょうか」
言われて時計を見ると、会場を出てからすでに一時間が経過していた。
「もうパーティーも終盤ね。
早く戻らないと“先生”帰っちゃうわよ?」
先生……まだいるよね…?
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