「……お兄様も心配してるわよ」 その切ない声に、顔を上げた。 ……気のせいだったみたいだけど。 愛華さんは凛としていて、初めの印象そのままに、私をまっすぐ見ていた。 「逢いたかったのに…… 逢いたくなかったんです」 私の、支離滅裂な一言。 でも、愛華さんは黙って続きを待ってくれた。 「触れたかった。……声を、聞きたかった。 でも……聞きたくない一言が……」 “婚約” 「わたし……好きだっ……っ な、んで…っ」 .