「さくら?」 もう一度、ハッキリと呼ばれた私の名前。 兄様を見ると、少し困った顔。 「……何かあった?」 柔らかく。でも、困ったままの笑顔で、「泣いてるよ」そう言って、私の頬に触れた。 ……泣いてる…? 言われて、自分の頬に手をやると、濡れていた。 「……ほんとだわ…」 自嘲し小さく笑った時、兄様に肩を掴まれた。 見上げると、私の後ろを見つめていて。 私も気になり、そちらを見ようとした瞬間――― 「……見ない方がいい」 兄様の、あまり出さない低い声。 その声に、体が固まった。 .