「何故今日連れてきたのか。あなたの考えることは、本当に分からないわ。
こんな、兎をチーターの群れに放り込むような真似……」
「御園、頼む」
さっきまでと違う兄様の低い声に、不安になる。
そんな私を御園さんは、憐れんだ表情で見下ろした。
「……仕方ないわね。
さくらさん、忍さんがそばを離れる時は私の所に来なさい。
この世界は華やかなだけではないわ。
毒を含んでる」
言って、悲しげに笑った。
「ありがとう、愛華」
「仕方ないでしょう? こんなギラギラした視線の中、可愛い兎ちゃんを放り出せないわ。
それに、やーっとあなた達の妹君に逢えたのよ?
楽しまなくちゃ!
……ま、私がそばにいたら誰も手は出せないから、安心して頂戴」
言って、私の顔間近まで近付くと、赤くひかれた唇を綺麗な形にして微笑んだ御園さん。
私は慌てて「今後とも、よろしくお願いしますっ」と勢い良くお辞儀をした。
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