「さぁ、行こうか」 兄様も私の様子に気付いたのか、腕に回した私の手を優しく握って笑った。 私も微笑み返して頷く。 目の前の、重厚な扉が開いた瞬間から、私は違う者になる。 “木崎 さくら”に…… 「あら忍さん? 今日は忍さんしかいらっしゃらないの?」 扉の中は色とりどりのドレスに身を包んだ女性達と、人目で上流階級だと分かる男性達が並んで談笑していた。 その中の、一際目を引くブルーのドレスの女性が、忍兄様に微笑みながら近付いてきた。 .