「なるべく早く帰るつもりだけど、俺も一通り挨拶して回らないといけないから、少しの時間、さくら一人になるかもしれない」
こうゆう華やかな場所への出席を許されなかった私は、パーティーに慣れていない。
そんな私を、兄様は心配そうに顔をのぞき込み「大丈夫か?」と聞いてきた。
確かに、慣れない場所で怖いけど……。
兄様は木崎家の長男。
私一人にかまってる場合じゃない。
「私は大丈夫よ」
安心させたくて笑顔で答えると、頭を撫で、「お前は強いな」と言って笑った。
エレベーターが、目的の階についた音を鳴らす。
途端に緊張で体が固まりそうな私は、兄様の腕に手を絡ませた。
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