「せんせ…」
「泣いてもダメだ」
言葉と裏腹に、先生は私を掴んでる反対の手で涙を優しく拭った。
「……俺は…」
ポロポロ次から次へと流れる涙を指ですくい上げ……
「―――もっと泣かせたくなる」
「…っ」
そう言った瞬間、体が浮いた。
「―――ン、」
塞がれた唇。
荒々しく合わせられた口から漏れるのは、甘い吐息。
「―――ダメ!先生…っ」
唇を何とかずらし、先生を止める。けど……先生の瞳が熱を帯びていて―――
その瞳を見た瞬間、体が動かなくなる。
「あはははっ でさー、あいつが……」
小さな話し声。
それはだんだん近づいてきて―――先生が、動いた。
「……逃がさないよ」
耳元で囁かれた瞬間、足から力が抜ける。
その拍子に、棚にぶつかりそうになった私を先生は抱き留め、バランスを崩した私達は倒れ込んだ。
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