「先生、お客様が会議室でお待ちです」
長い艶やかな黒髪を風に靡かせた中山先生が、先生の腕にそっと触れた。
それを見てられず、私は目を反らす。
「……分かりました。少し待たせていて下さい。
姫野さん、こちらに」
呼ばれて、メガネ越しの先生の瞳と目が合った。
「説明します。座って下さい」
先生の座った椅子のすぐ隣の席をひいて、私を見上げる。
その黒い瞳をそらせず近付くと、後ろからヒールの足音がした。
「では、お客様に伝えてきます…」
そう言って、何となく後ろ髪を引かれながら、資料室から出て行く中山先生。
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