「関口とうとう戻って来なかったね〜」
帰りのHRが始まる時、誰かが気付いた。
――が、私はそのまま鞄に教科書を仕舞っていく。
「……はい、席に着きなさい」
―――その声に、教科書を仕舞う手が止まった
。
「……関口君は戻りませんでしたか」
他の先生から話を聞いていたらしい先生は、関口君の席に目を向けた。
そして、そのまま隣の私に視線を合わせる。
途端に、苦しくなる胸。
「姫野さん、具合はもう大丈夫ですか?」
ヨレヨレの白衣にボサボサの髪。
メガネの下の瞳は、長い前髪に隠れて見えないはず……なのに。
「……はい。大丈夫です」
何故か、目を合わせられず俯いてしまった。
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