「姫野さん?」 先生の呼ぶ声がする。 でも―――…ごめんなさい。 顔を上げられないんです。 机に大きな水溜まりが出来て、とうとう私の様子に気づいたみんながざわめき始めた。 「――先生! 姫野さん具合が悪いそうなので、保健室に連れて行きます!」 隣の声に驚いた瞬間、手を掴まれ引っ張られた。 「……顔上げんな」 関口君の低い声が頭上に響く。 強く掴まれた手が痛い。 でも……温かい。 .